薬物中毒から立ち直ることの難しさ、一度道を踏み外した者が更生する難しさを描いた『ベン・イズ・バック』。ドラッグにハマり、自らも売り子として犯罪に手を染めてしまった若者ベンと、その家族たちの1日を描いた作品。ベンを心配し、彼を信じる気持ちと信じられない想いの狭間で苦しむ母親をジュリア・ロバーツが熱演。
画像: 『ベン・イズ・バック』予告編(60秒) m.youtube.com

『ベン・イズ・バック』予告編(60秒)

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ストーリー: 薬物による被害者が加害者にもなる複雑な事情

クリスマスの準備に余念のない家族たち。
教会で行われるイベントの準備を終えて、車で自宅に戻った母子は、家の前に座り込んだ少年の姿に凍りつく。それは薬物依存者として施設で治療を受けているはずの長男 ベンだった。

クリスマスを家族と一緒に過ごしたい、という想いは、ベンも母親たちも同じ。一度はベンを施設に送り返そうとする家族だったが、更生の過程にあり努力を続けているというベンの言葉を信じ、一晩だけ家に留まることを許す。
しかし、そんな家族たちの想いと裏腹に、断ち難い薬物使用への誘惑と、かつての悪い仲間たちとのしがらみは、ベンを簡単には解放してはくれないのだった。

薬物依存の悲惨な現実と、(その被害者たちからの搾取を行う加害者としての)ドラッグディーラーたちの冷酷かつ身勝手な欲望の恐ろしさを、我が子の更生を願う母親の必死の愛を通じて描いたヒューマンドラマ。

ベンの、依存者つまり薬物中毒の被害者としての顔と、売人になって他者を中毒者にしてしまった 加害者としての顔を同時に描くことで、薬物依存症が蔓延する悲惨な状況の複雑さを観る者に強く訴えている。

薬物中毒者の更生は簡単ではないから、最初から遠ざけるべき。治療より予防を!

本作では、薬物依存に苦しみながらも 自身も売人として周囲に薬物を売り捌いて中毒者を増やす罪を犯してしまった少年ベンの苦悩を描いている。

ベンは、自分自身も薬物依存を断ち切ろうと努力するし、犯罪から足を洗おうとするが、薬物使用による強烈な快感の記憶を忘れることは容易ではないし、犯罪組織と距離を置くことは簡単なことではなかった。

彼の更生を信じる母親や弟妹たちの信頼に応えたい、でも自分が近くにいることによって彼らを危険に晒すのは耐え難い。自分の存在を許してもらいたいけれど、自分自身が許せない、という相克した感情の中で苦悩する若者と、そんな彼の感情を全て理解できているわけではないけれど、なんとか救いたい、なんとか昔の彼に戻したいと願う母親の姿は、感動を呼ぶより息苦しさに耐え難くなるほど悲惨だ。
本作は、薬物によって生まれる多くの不幸からの脱出することによって得られるであろう安寧を描こうとしているのではなく、その過程の極限的な辛苦を我々に教えようとしている。
試練を乗り越えた先の未来がある、だからもし家族にそんな依存者が生まれてしまっても見捨てないで欲しいというメッセージではなく、一度そんな状態にハマってしまったら抜け出すことは容易ではないから、初めから薬物に手を出させないようにさせようというメッセージだと思うべきだ。

治療より予防を。
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)でも同じだと思うが、治そうと考えるより、発症させない、と強く心に決めて日々生活することが重要だと思い知らされる作品だ。

画像: 『ベン・イズ・バック』ジュリア・ロバーツが薬物中毒の息子に愛を捧げる母親を熱演

小川 浩 | hiro ogawa
株式会社リボルバー ファウンダー兼CEO。
マレーシア、シンガポール、香港など東南アジアを舞台に起業後、一貫して先進的なインターネットビジネスの開発を手がけ、現在に至る。

ヴィジョナリー として『アップルとグーグル』『Web2.0Book』『仕事で使える!Facebook超入門』『ソーシャルメディアマーケティング』『ソーシャルメディア維新』(オガワカズヒロ共著)など20冊を超える著書あり。

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