1980年から90年代にかけて、全米を恐怖に陥れたのは悪魔信仰者と彼らの禍々しい儀式は実在するという都市伝説だった。ミネソタ州の田舎町で起きたDV事件の影に悪魔信仰団体の存在を嗅ぎつけた刑事をイーサン・ホークが、DVの被害者となった若く美しい娘役をエマ・ワトソンが演じている。
画像: 映画『リグレッション』予告編 youtu.be

映画『リグレッション』予告編

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全米を恐怖に陥れた、悪魔崇拝団体が実在するのではないか?という不安を基に製作された作品

舞台は1990年のミネソタ。刑事のブルース・ケナー(イーサン・ホーク)は、父親に性的虐待を受けたと告発した少女アンジェラ(エマ・ワトソン)の事件を調べていくうちに、それが単なる家庭内のDV事件ではなく、FBIが追うより大きな案件に繋がっているという確信を得る。

それは、全米各地に広がる悪魔信仰と、その信者たちが行う恐ろしくも凶々しい悪魔崇拝儀式の存在。ブルースはアンジェラがこの悪魔崇拝者たちの生贄にされようとしていると考えたのだった。

ブルースは、著名な心理学者の協力を仰ぎながら捜査に臨むが、深い霧に行く手を阻まれるような感覚の中、真相に近づくどころか、ひたひたと迫ってくるかのような心理的な恐怖に悪夢を見るようになるのだった。

本作は、少しでも挙動不審な者は全て悪魔崇拝者に見えてしまうような圧迫感のある恐怖心に怯えていた、80-90年代のアメリカの社会不安をベースとして脚本化された心理サスペンスだ。

純粋なる邪悪は存在するか

悪魔信仰団体の存在は、1980-90年の米国ではまことしやかに噂されたという。実際にはそのような団体の存在の証拠は見当たらず、結局都市伝説のような単なる噂話であったらしいが、日本においてもバブルが弾けた後の95年には、カルト系宗教団体によるテロが起きるなど、経済的停滞期には 多くの社会不安の種が生まれるものだ。

本作においても、実際に悪魔崇拝者が過激で陰湿な事件を起こしているかどうかではなく、そうした存在を意識することによって、いとも簡単に精神の平安を失い、疑心暗鬼に陥ってしまう、人間の脆さを描いており、悪魔または彼による邪な誘惑は 我々自身の心の弱さが引き寄せるものであることがよくわかる。

本作のタイトルであるリグレッション(Regression)とは、日本語では回帰という意味になる。本作中に登場するブルースへの協力者である心理学者が 容疑者たちの深層心理を探ろうとして催眠療法を施すのだが、この催眠療法自体のことを指しているらしい。人間の心の奥底に眠る記憶や本音に“回帰”しようということなのだが、その記憶や本音が真にオリジナルなものなのか、それとも改竄されたものなのか確信が持てない、という根源的な恐怖を示しているのだと思う。

ちなみに、悪魔どころか神の存在自体も信じていなかった主人公のブルースだが、己れの精神力や意志の強さへの確信を揺るがされてしまう中で、100%ピュアな悪意の存在を知って恐怖する。本作において、純粋なる善意の存在があるかどうかはわからないままだが、純粋な邪悪の存在については目の当たりにしてしまうブルースが、今後は心に沈殿するかのような不安とともに生きていくだろうことはわかる。そんなラストに、我々もまた恐怖するのである。

画像: 『リグレッション』が提起する〜純粋なる邪悪は存在するか?

小川 浩 | hiro ogawa
株式会社リボルバー ファウンダー兼CEO。
マレーシア、シンガポール、香港など東南アジアを舞台に起業後、一貫して先進的なインターネットビジネスの開発を手がけ、現在に至る。

ヴィジョナリー として『アップルとグーグル』『Web2.0Book』『仕事で使える!Facebook超入門』『ソーシャルメディアマーケティング』『ソーシャルメディア維新』(オガワカズヒロ共著)など20冊を超える著書あり。

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