ジョーカーと破局後のハーレイを演じるのはマーゴット・ロビー
DCコミックスが誇るスーパーヒーロー バットマンのライバルと言えばジョーカー。道化師メイクと狂気を孕むユーモアのセンスで背徳的な人気を持つスーパーヴィランだが、その彼のGF(恋人)がこのハーレイ・クイン。
元は精神科医としてジョーカーの精神鑑定に当たっていたが、彼の狂気の影響をモロに受けて、女版ジョーカー≒ハーレイ・クインへと変貌してしまったのが彼女だ。本作でも『スーサイド・スクワッド』に続きマーゴット・ロビーがイカれたオンナのイカしたカワイサを楽しげに演じている。
ジョーカーとの別離によって開かれたハーレイ・クインの新しい人生
本作では、犯罪王子ジョーカーの“女”として、ゴッサムシティでやりたい放題だったハーレイが、ジョーカーとの関係を清算しフリーになったことで警察からも他の悪党からも命を狙われ始めてしまう様を描く。
(バットマンの正体である)ブルース・ウェインに次ぐ大富豪の家に生まれながら その邪悪な性格ゆえに勘当され、そのまま犯罪者たちのリーダーとして夜の街に君臨するブラック・マスクことローマン・シオニス(ユアン・マクレガーが好演。いつもの馬鹿っぽい笑顔が邪悪さと狂気を湛えたニュアンスを生んでいる)は、自分とキャラが被るハーレイを邪魔に思っていた。
彼女がジョーカーの庇護下にあるうちは手が出せなかったが、その彼女がジョーカーと破局した途端に牙を剥く。
そんなローマンの殺意に、マフィアの隠し金を巡る争奪戦が拍車をかけて、街中の悪党を巻き込む大騒乱を引き起こしていく。
米系映画の二大潮流が交錯したハイブリッド映画
失恋の代償に短く髪を切ってしまうハーレイだが、おなじみのツインテールは維持し、いつものショートパンツ姿と ハイテンション(躁状態?)もそのまま、2016年に世界を魅了したあの常軌を逸した陽気なセクシーさを存分に堪能できる作りになっている。
今回、彼女と共闘してローマンに対抗することになるチームのメンバーは全員女性。監督も脚本も女性である本作は、ジョーカーという“強い”男性の庇護を離れて独り立ちするハーレイの姿を通しながら、女性の社会進出の成功、というよりも、そもそも男に負けない強さをもっているという事実を見せつけようという意志があるのだろう。(強さに 可愛さがプラスされるのだから、本来鬼に金棒なのだが)
その意味では、本作は「ワンダーウーマン」や「キャプテン・マーベル」などの女性ヒーロー物の派生でもあるし、「ジョーカー」「ヴェノム』といったスーパーヴィランをヒーロー的に描くパターンの1つともいえる。そうしたトレンドのハイブリッドな作品だといえるだろう。
ちなみに、『グリーン・アロー』にも登場するヴィラン ブラック・キャナリーや、『ゴッサム』でその凄腕ぶりを見せるヴィクター・ザーズなど、DCファンなら思わず歓声をあげてしまう有名キャラをさりげなく登場させているのも、アメコミ原作の映画の楽しさだ。
映画の出来自体は、まあこんな感じかな、というところ。肩肘張らずに楽しめばいいじゃん、そういう映画だ。
ハーレイの見た目そのままに、華やかでポップでキッチュな画面はキャンディショップのようで愉しい。ローラースケートやバイクを生かしたアクションも見応えあるし、狂った明るさを爆発させるハーレイに対する悪役となるブラック・マスク=ローマン・シオニスも 子供じみた癇癪を存分に見せてくれていていい感じだ。
ストーリーを丹念に追うのではなく、何かメッセージを受け取ろうとするのでもなく、ポップコーンとコーラを口にしながら楽しく観る、それだけに集中すべき映画である。
小川 浩 | hiro ogawa
株式会社リボルバー ファウンダー兼CEO。
マレーシア、シンガポール、香港など東南アジアを舞台に起業後、一貫して先進的なインターネットビジネスの開発を手がけ、現在に至る。
ヴィジョナリー として『アップルとグーグル』『Web2.0Book』『仕事で使える!Facebook超入門』『ソーシャルメディアマーケティング』『ソーシャルメディア維新』(オガワカズヒロ共著)など20冊を超える著書あり。