仕事に育児に頑張りすぎるあまり、疲弊している多くの女性たちへの敬意を呼び起こす、感動作だ。
育児に疲れて化粧っ気もなく、体型も崩してしまっていたマーロが、タリーとの出会いをきっかけに美しさを取り戻していく様は、セロンの役者魂に頭が下がるほど見事。
仕事、家事、育児。三位一体を求められる女性たちに敬意を。
本作は、女性の友情物語であると同時に、社会人として仕事に従事し、妻として家事に勤しみ、母親として育児に取り組まなければならない女性の大変さを 真正面から描く、社会的な作品でもある。ただ、そんな女性の大変さに理解が薄い夫(男性)の姿をやや皮肉げに描いてはいるものの、だからといって彼を厳しく弾劾するような、女性の“人権問題”をテーマに置いた作品ではない。
あくまでも、彼女たちの苦労を描きつつも、その苦労を投げ出したりせず なんとかやり遂げようとする強い意志の気高さを称える内容であり、さらに 女性としての美しさ(端的にいうと、性的な魅力)を諦めることも拒否するという明確な宣言が高らかに為されているのである。
本作において、マーロの夫は、マーロの大変さを100%理解できてはおらず、自分の仕事には真摯に向き合ってはいるものの、家事や育児にはコミットできているとは言い難かった。さらに言えば、オンナとしてのマーロへの配慮は全くなかったと言えるだろう。
マーロは、タリーの助けを借りて、家事や育児のストレスから解放されるだけでなく、オンナとしての魅力を取り戻し始めるが、それは夫からの積極的な支援を引き出すことにもつながっていく。
そんなマーロの姿に多くの女性は感銘を受けるだろうし、男性もまた声高に不満を吐き散らすのではなく 自分に課せられた役目に必死に取り組む女性のひたむきさに 我が身の至らなさを突きつけられて、自分も何かしなければ、と自発的な反省を促されることだろう。
配役に応じて見た目を変えてくるプロ根性を見せるヒロインたち
タリーを演じるマッケンジー・デイヴィスは、『ターミネーター:ニュー・フェイト』でターミネーターに狙われる主人公を守るために未来から送られてきた戦士を演じた女優で、180cm近い長身の持ち主。シャーリーズ・セロンも公称177cmというから、ほぼ同じ背丈になる。
セロンはモデル体型で知られるが本作では育児にかまけて自分磨きをする時間を取れない母親の、緩みきったカラダを 見事に“作り上げ”ているし、逆に『ターミネーター』では筋肉質な肉体を見せつけたマッケンジーは、本作では華奢でセクシーな容貌で魅せてくれる。
よく役柄に合わせて肉体改造をしてくる俳優を“カメレオン”と呼ぶが(『ダークナイト』シリーズのクリスチャン・ベイルや、ロバート・デ・ニーロ、日本では故・松田優作などが有名)、彼女たちの役作りへの取り組みもまた、カメレオンと呼ぶにふさわしいものだ。
その意味では、本作を観ると、ああ、女性は母親は大変なんだな、家事に仕事に育児にむかう彼女たちには本当に頭が下がるな、という感想を持つのは当然として、やるべき事に真剣に向き合う姿勢に男も女もないな、ということを100%理解させてくれる作品となっていると言えるだろう。
小川 浩 | hiro ogawa
株式会社リボルバー ファウンダー兼CEO。
マレーシア、シンガポール、香港など東南アジアを舞台に起業後、一貫して先進的なインターネットビジネスの開発を手がけ、現在に至る。
ヴィジョナリー として『アップルとグーグル』『Web2.0Book』『仕事で使える!Facebook超入門』『ソーシャルメディアマーケティング』『ソーシャルメディア維新』(オガワカズヒロ共著)など20冊を超える著書あり。