長年勤めてきたテレビ局を辞め、自由な生活を求めてほぼ廃墟化したカフェを借りて住み着いた松ちゃん。友人のシンちゃんのバイク屋の手伝いで何とか糊口をしのいでいたはずが、そのシンちゃんが脳梗塞で倒れ・・
Mr.Bike BGで大好評連載中の東本昌平先生作『雨はこれから』第58話「風の背中は金」より
©東本昌平先生・モーターマガジン社 / デジタル編集 by 楠雅彦@dino.network編集部『雨はこれから』

友人のバイク屋を手伝う松ちゃん

画像1: 友人のバイク屋を手伝う松ちゃん

長年の友人であり、時折仕事をくれていたバイク屋の社長、シンちゃんが倒れた。脳梗塞らしい。
命に別状はないようだが、しばらくは入院が続くし、退院しても半身不随になるかもしれない。
誰に頼まれたわけでもないが、私はシンちゃんの代わりに店の管理をかってでた。

主人が不在でも仕事は入ってくる。修理だ、車検だと、客は待ってくれない。私は社長の代行として、店に入った。

画像2: 友人のバイク屋を手伝う松ちゃん

一息ついた頃に、店に入ってきたのは、行きつけのサテンの炉煎(ロイ)のマスターの孫娘、ソノミだった。相変わらずのライダー姿で、愛車のBMWで乗りつけてきたとすぐに分かった。

「なんだ、修理か?工賃はともかくビーエムは安くなんねーぞ」と私は言ったが、ソノミは少し不機嫌そうな顔で首を振る。
「修理じゃないって。今度はバイク屋さんはじめたの?」

画像3: 友人のバイク屋を手伝う松ちゃん
画像4: 友人のバイク屋を手伝う松ちゃん

そうじゃない、と私はかいつまんで事情を説明した。
するとソノミは「松ちゃんて変わってるわねェ」と、面白くもなさそうな表情で呟いた。

鈍いの?松ちゃん

私はソノミが訪ねてきた理由を推し量りかねて、とりあえず溜まっていく一方の仕事を片付けようとパソコンの画面に目をやった。

すると、ソノミはカウンターから少し離れて、全身を私に見せるように立ち上がった。

なに?、どうした?と私は彼女の気配だけを感じながら、パソコンの画面から目を離さずに言った。

どう?

と、言ったソノミの声はいつもより少し高めだった。その声調に、私は思わず彼女の方に向き直る。すると、ソノミは意味深な表情のまま、こう言った。

「おかしいわねェ。女に興味ないの!?」

私はその質問の意味がわからずにソノミの顔を見た。すると彼女は、畳みかけるようにこう言った。「たいがいのオヤジはヤラシイ顔で私の体ほめてくれるんだけどなァー」

画像1: 鈍いの?松ちゃん
画像2: 鈍いの?松ちゃん
画像3: 鈍いの?松ちゃん

さて。彼女の真意はなんだろう?
私にはよくわからない。

画像4: 鈍いの?松ちゃん
画像: 興味ないフリが得意なわけじゃない〜東本昌平先生『雨はこれから』第58話「風の背中は金」より

楠雅彦 | Masahiko Kusunoki

車と女性と映画が好きなフリーランサー。

Machu Picchu(マチュピチュ)に行くのが最近の夢。

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