人間と共に暮らす動物たちの喜怒哀楽を描いた心温まるアニメーションムービーの第二弾。
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ペットと赤ん坊への愛情を両立する、ハッピーな物語
主人公のテリア犬 マックスは、相棒の大型犬デュークと共に、飼い主のケイティのもとで楽しく気楽な生活を送っていた。ところがケイティが結婚し、子供リアムを授かったことから彼らの暮らしは激変。最初はリアムに自分たちの居場所とケイティの関心を奪われると警戒していたマックスだが、徐々に自分こそがリアムの庇護者であるという気分になり、溺愛し始める。
飼い主の愛情を一身に受けていたペットが、赤ん坊にジェラシーを感じるというのはよく聞く話だが、ペットの目線から、嫉妬を感じつつも 新しい闖入者である赤ん坊に深い愛情を感じていく様を描いた、とても温かい作品。
トイ・ストーリーシリーズで、オモチャたちが主人である子供に強い愛情を抱く様子に似ているが、トイ・ストーリーシリーズの最新作では、やがて成長してオモチャ不要になっていく子供達と、オモチャたちの切ない別れを描いていたが(それはそれで余熱を感じさせるものではあったが)、本作では安定を保ったままで 誰が見ても 安心できるハッピーエンディングが用意されている。
生きる厳しさとは無縁の存在たちの、贅沢な悩み
本作では、主人公のテリア犬マックスを中心に、さまざまな境遇にある動物たち(犬、猫、兎、牛、羊、猿、虎、狼!など)が描かれている。もちろん野生の動物はほぼ出てこず、基本的には人間の庇護によって暮らす立場の動物だけだが(必ずしもペットとは言えない立場の動物も出てくる)。
本作は一作目のヒットによって生まれた続編だが、人間の庇護下にあり、愛情を受ける代わりに飼い主に対する強い忠誠心を持つペットの様子を描いている。つまり、野生の動物ではなく、あくまで人間世界で生きる者の視野であり、我々人間側が持つ期待値の範囲内での話ではある。
野生の動物の本能や、厳しい自然との戦いを否応なしに強いられる者の切迫感は本作には不必要なものであり描かれることはない。同じ人間の庇護もしくは監視下に置かれた動物として、農家やサーカスなどで生きる動物(つまり愛玩用のペットではなく使役動物)も出てくるが、やはり野生とは違う。野生の動物たちは、自由の代償として、生存すること、そしてそのために日々の糧を得て腹を満たすことを常に一義に考えるだろうが、主人公のマックスたちペットには今夜食事にありつけないかもしれないという不安は皆無。
ある意味、非常に贅沢な生き方を許された者たちの話なのである。
前項で「トイ・ストーリー」シリーズとの比較に触れたが、人間の子供たちとの触れ合いを最上の幸せと感じていたおもちゃたちが、やがて自分への飽きや 成長につれてやってくるおもちゃそのものへの無関心から、子供たちとの別れを経験する切なさが描かれるシリーズ後半の寂しさは本作にはまだない。
「トイ・ストーリー」シリーズでは、愛する子供との別離、そして新しい出会いを経て、最後は、恐れつつもやむを得ない宿命もしくは輪廻のように捉えていた、一種の諦念を持って生きてきたことに疑念を持ち、誰かから受ける愛情に依存して生きることをやめようと決意するまでが描かれているが、ペットの世界ではどうなのだろうか。
破損しない限り、半永久の命を持つおもちゃと比べ、人間より短い寿命をしか持たないペットたちとの別れが描かれるほど、本シリーズが長寿シリーズになるかどうかはわからないが、今のところは(前述したように)誰が見ても安心できるハッピーエンディングが用意されており、その先を不吉に感じ取る必要は全くないのだ、と今は言っておこう。
小川 浩 | hiro ogawa
株式会社リボルバー ファウンダー兼CEO。dino.network発行人。
マレーシア、シンガポール、香港など東南アジアを舞台に起業後、一貫して先進的なインターネットビジネスの開発を手がけ、現在に至る。
ヴィジョナリー として『アップルとグーグル』『Web2.0Book』『仕事で使える!Facebook超入門』『ソーシャルメディアマーケティング』『ソーシャルメディア維新』(オガワカズヒロ共著)など20冊を超える著書あり。