2001年スリランカで左目を失い、以降は眼帯姿をトレードマークとして活躍した実在の戦場記者メリー・コルヴィンの伝記映画。2012年 シリア内戦取材中に命を落とすまでを描く。

英国サンデー・タイムズ紙の特派員として、世界中の戦地に赴き、レバノン内戦や湾岸戦争、チェチェン紛争、東ティモール紛争などを取材してきた女性記者、メリー・コルヴィン。その後、スリランカ内戦で左目を失明し、PTSD(心的外傷後ストレス障害)に苦しみながらも、黒の眼帯をトレードマークに、世間の関心を紛争地帯に向けようと努めた“生きる伝説”は、2012年、シリアで受けた砲撃で命を落とす――。

メリーを演じるのは「ゴーン・ガール」で知られるロザムンド・パイク。美人ではあると思うが、今回は色気を完全に封印して、戦地取材のスリルに取り憑かれた中毒者の執着を演じ切っている。

ジャスミン革命に始まった、アラブの春と名付けられた、中東における過激な民主化運動を丹念に取材し続けたメリー・コルヴィンだったが、激化するシリア内戦は むしろ政府軍による過剰な民主化運動への弾圧であると主張。その告発後に取材地のシリアの都市ホルスで 政府軍の爆撃に巻き込まれて彼女は命を落とすのだが、以降 シリア国内における外国人ジャーナリストへの抑圧が強化されていくのである。

実在のメリーがどのような心理状態にあったのかは分からないが、本作のヒロインとしてのメリー・コルヴィンは、戦場に長くいすぎたことによって強いトラウマを抱えるようになり、戦争によって命を落としていく民間人やジャーナリストたちの無念を我が事のように感じている。しかし、同時に戦場に赴くことでしか得られない生の実感を強く求める自分の矛盾も理解している。つまり、無慈悲に人の命を奪う戦争に激しい憎悪を持ちながらも、そんな世界に身を置くことを望む確信犯として描かれているのである。

その意味では、本作は「タクシー・ドライバー」や「ディア・ハンター」に通じる、戦争という異常な環境に精神を侵されてしまう、哀しい人間の姿を描いた作品の一つだといえるのではないだろうか。

画像: 『プライベート・ウォー』実在の戦場記者の半生を描いた骨太作品

小川 浩 | hiro ogawa
株式会社リボルバー ファウンダー兼CEO。dino.network発行人。
マレーシア、シンガポール、香港など東南アジアを舞台に起業後、一貫して先進的なインターネットビジネスの開発を手がけ、現在に至る。

ヴィジョナリー として『アップルとグーグル』『Web2.0Book』『仕事で使える!Facebook超入門』『ソーシャルメディアマーケティング』『ソーシャルメディア維新』(オガワカズヒロ共著)など20冊を超える著書あり。

This article is a sponsored article by
''.