「最強のふたり」で一躍世界的スターとなったフランスの黒人俳優オマール・シーが、少年時代に冤罪で父親を喪い、復讐を誓う男アサンを演じる。フランスの国民的英雄 怪盗ルパンに憧れるアサンが、ルパンさながらの鮮やかな盗みのテクニックを披露しながら、父親の仇に迫っていくピカレスクストーリー。

アルセーヌ・ルパンとは?

アサンが憧れ、模倣するのは、フランスの小説家モーリス・ルブラン原作の推理小説・冒険小説「アルセーヌ・ルパンシリーズ」の主人公アルセーヌ・ルパン。泥棒つまり犯罪者をヒーロー的に取り上げた小説としては、世界で最も人気があるのではないかと思うが、泥棒でありながら庶民からは盗まない義賊的な振舞いと、常に陽気で闊達な態度、よく鍛えられた肉体と優れた容姿を持つ“イケメン”ぶりで女性にもよくモテるので、世界に多くのファンを持つ。

日本では、モンキー・パンチの「ルパン三世」の影響で、ルパンといえば猿顔のガニ股で少々おっちょこちょいの浮気者という印象が強いが、本家のルパンはあくまで正統派の好男子だ(ちなみに、ルパン三世は、アルセーヌ・ルパンの孫、ということになっている)。

本作におけるルパンとは、当然このアルセーヌ・ルパンを指すが、作中でもあくまでも創作物の中の登場人物であり、本作の主人公アサンはルパンと血縁関係があるわけではない。(主人公アサンが、父親からもらった唯一のプレゼントがルパンシリーズの小説であり、少年時代のアサンが多大な影響を受けた、という設定)

父親を奪われ、ルパンに憧れて犯罪者となった男の復讐譚

本作は、フランスの経済を牛耳るほどの大富豪の住込運転手として働いていたアサンの父親が、マリー・アントワネット由来の高価な首飾り(注)を盗んだという罪で投獄され、そのまま刑務所で自殺するという悲劇から始まる。主人公のアサンは父親からもらったルパンシリーズの小説の影響を受けて、ルパンのやり口を地でいくような大胆かつ洗練された手口を特徴とする泥棒になるのだが、その実 自分の父親の無実を信じ、彼の無念を晴らすために事件の真相を追っている。

(注)マリー・アントワネットの首飾りは実在する。フランス革命勃発の遠因のひとつともされる因果をもつこの首飾りは多くの創作物を派生させるが、ルパンシリーズにおいても「王妃の首飾り」として登場する。

あるとき、盗難にあったまま行方知らずであったはずのこの首飾りが発見され、富豪相手のオークションに出されることになったことから、アサンは父親の冤罪の真相に近づくチャンスを得る、というのが本シリーズの大まかなストーリーだ。

シーズン2の公開は決定した模様

本作は一本の映画ではなく、連続ドラマシリーズとして制作されている。現在Netflixでシーズン1が公開されているが、どうやらシーズン2の制作も決定したらしい。

(本シリーズは1本1時間程度で第5話までしかなく、しかも謎解きのまるで途中で終わっているから、万一これでシリーズ打切りになっていたら、あまりにもひどすぎる展開だった。逆に言えば、制作者たちからすれば シリーズ継続は既定路線だった、ということかもしれない。
ちなみに、本作はフランスを舞台にしており、当然ながら全編フランス語。世界市場を相手にしているNetflixからしたら、非英語作品を多く手掛けることは当たり前のことかもしれないし、最近のネット配信ユーザーは日本語や韓国語の作品の視聴に慣れているから、なんの違和感もないのだろうが)

怪盗紳士ルパンへのオマージュとしての出来はいい

主人公のアサンを演じるのは、冒頭でも述べたように「最強のふたり」で世界的にブレイクしたオマール・シー。190センチの巨躯ながら、穏やかで心に染み入る微笑み方をする、いかつさよりは柔和で優しい印象を持つ役者だ。

知性的という感じでもないが、大胆不敵で洗練されたテクニックを持つ怪盗紳士を巧みに演じている。

(オリジナルの)ルパンが持つ傾奇者的な洒脱さを再現する脚本も演出もなかなかいい。展開されるトリックも、厳密に言ったら穴だらけなのかもしれないが、エンターテイメントとしては観ているものを納得させるに足る鮮やかでオシャレな雰囲気で進むから、誰でも充分に楽しめるものだ。

ただ、いくつか苦言を残しておくと、まず ルパン推しがひどすぎてくどい。アサンがルパンに影響を受けているのはいいのだが、もう少しサラッとしていた方がいい。(例を挙げると、アサンには息子がいるが彼の名前はラウール=ルパンの偽名?の一つ で、さらにラウールの誕生日にルパンの代名詞とも言われる片眼鏡とシルクハットの仮装をプレゼントしたり、息子にもルパン本を贈ったりと、とにかくしつこい)
もうひとつは、アサンのスーツ姿が似合わなすぎなこと。007役を受けた際に世界中からバッシングを受けたダニエル・クレイグがアンチを黙らせたのは、やはり彼のスーツ姿があまりにカッコよかったからだと思うのだが、オマール・シーのそれは 逆にあまりにもカッコ悪すぎてまるでジョークだ。
英国作品とフランス作品の(センスもしくは見た目の判断基準の)違いがあるかもだが、ルパンはその手口だけでなく見た目もクールであって欲しい、とつくづく思うのである。

画像: 『Lupin/ルパン』怪盗紳士アルセーヌ・ルパン由来のピカレスクドラマ

小川 浩 | hiro ogawa
株式会社リボルバー ファウンダー兼CEO。
マレーシア、シンガポール、香港など東南アジアを舞台に起業後、一貫して先進的なインターネットビジネスの開発を手がけ、現在に至る。

ヴィジョナリー として『アップルとグーグル』『Web2.0Book』『仕事で使える!Facebook超入門』『ソーシャルメディアマーケティング』『ソーシャルメディア維新』(オガワカズヒロ共著)など20冊を超える著書あり。

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