エミネムの半生を描いた「8Mile」を彷彿させるような、熱いビートが迸る一本だ。
彼女たちは実際には、法的な差別や不平等に晒されているわけではないのだが、文化的に男尊女卑的な空気がまだ払拭されていないのである)
この『ガリーボーイ』は、こうした様々な社会矛盾や差別に対して、ビートとライムで立ち向かう、ヒップホップという新しい文化に縋る若者たちの苦悩と反抗を描いた作品だ。
作中では、ムルドは人気ラッパー ガリーボーイとして 新しい自分の居場所を作り出していくが、結果としてそれが社会差別の破壊につながるとは思えない。思えないのだが、それでも ほんのか細い糸であろうとも、そしてその糸に引き上げてもらえるのはほんのわずかな才能と運に恵まれた者だけだとしても、閉塞的な、岩盤のように硬い世界に穴が空いていると思えることが、一つの救いとなってやがてはさらに大きな穴を開けるきっかけになる。
つまり、本作『ガリーボーイ』は、そんな インドの若者たちの心に差し込む一筋の光なのであって、こうした映画が作られ始めていること自体が次なる奇跡へとつながっていく、細い糸であると思うのである。
小川 浩 | hiro ogawa
株式会社リボルバー ファウンダー兼CEO。
マレーシア、シンガポール、香港など東南アジアを舞台に起業後、一貫して先進的なインターネットビジネスの開発を手がけ、現在に至る。
ヴィジョナリー として『アップルとグーグル』『Web2.0Book』『仕事で使える!Facebook超入門』『ソーシャルメディアマーケティング』『ソーシャルメディア維新』(オガワカズヒロ共著)など20冊を超える著書あり。