ロシアのサンクトペテルブルク港からフェリーに乗ってバルト海を進み、ドイツ北部のリューベック港へ上陸。一ヶ月を過ごしたロシアとは違う世界だった。アウトバーンのサービスエリアには、ヨーロッパ各地の地図がズラリと並ぶ。ユーラシア大陸横断紀行も、いよいよ終盤へとさしかかってきた。大陸の最西端に位置するポルトガル・ロカ岬を目指して、スパートをかける。
文:金子浩久/写真:田丸瑞穂
※本連載は2003〜2004年までMotor Magazine誌に掲載された連載の再録です。当時の雰囲気をお楽しみください。

ドイツへ上陸するなり疾風のごとく西へと進む

サンクトペテルブルクからの3泊4日の船旅を終え、北ドイツのリューベック港からカルディナでのロカ岬行きのドライブが始まった。

ヨーロッパ、それもドイツの港はロシアのそれとは対照的に、すべてが整然としている。

トランスフィンランディア号からカルディナを港に降ろし、税関の前に停める。税関といっても、2階建ての小さなビルだ。書類を整え、建物に入っていこうとすると、建物から人が出てきた。緑色の制服らしきセーターを着たお爺ちゃんふたりがどうやら係官のようだ。

係官のチェックは、テールゲートを開けて、荷物を確認するだけで、あっけなく終わった。次は、横の建物に入り、船会社にトランスフィンランディア号の乗船料金を支払いに行く。カルディナー台が400ユーロ、人間ふたり510ユーロで、合計910ユーロ(約11万8000円)をユーロ紙幣で支払う。

散々待たされたサンクトペテルブルクやウラジオストクとは大違いで、ここドイツには簡単に入国できた。通関業務がシステマチックに遂行されるという、当たり前のことが、ものすごく心地良い。

リューべック港の敷地から出ると、典型的なドイツの街並みが広がっている。たった一ヶ月間ロシアにいただけなのに、ドイツの整然とした景観が実に新鮮に感じる。

道路標識、信号、道路の舗装状態、走行区分などから始まって、家々と庭先の手入れ具合にいたるまで人間の手が入り、「文明による秩序」といったものが行き渡っている。自由奔放に放ったらかしにされているものが何もない。社会と個人による意志の具現化が徹底されている。

ロシアにはそれが少なかったが、日本だって、ドイツほど徹底されているわけではない。あいまいな標識や、名前の付けられていない道路、野放しの商業看板、不法投棄されたゴミなど、ロシアのことを一方的に批判できる資格は僕らにはない。

整然さこそがドイツ流
運転時の疲労も軽い

ロータリーと信号をひとつ越えただけで、アウトバーンのA1(E22)に乗る。ここでも、「文明」を強く感じる。鏡のようにフラットな舗装、完璧な標識、加速に十分な長さのランプウェイ、中央分離帯を備えた片側2車線路等々。

画像: 整然さこそがドイツ流 運転時の疲労も軽い

走行車線では、時速130〜140キロでクルマが流れている。追い越し車線は、時速150キロ以上だ。時には、時速200キロ以上と思われるメルセデスやBMWがスッ飛んでいく。

ロシアのウラル山脈越えの時のように、右や左から節操もなく追い越しをかけていくなんてことはない。十分な助走距離を使って追い越し、追い越しが終わってもこれまた十分に余裕を保ってから走行車線に戻る。ここでも、日本の現状はロシアを笑えない。

高速道路はあるけど、ダラダラと追い越し車線を走るクルマ、ウインカーを出さず、周囲も確認せずに車線変更をするクルマ、サービスエリアの身障者用パーキングスペースにクルマを停めて平気なドライバーが増えているような気がする。

「何から何まで、ロシアと違うね」

「まさに、ブンメイ国って感じ」

田丸さんもご機嫌だ。

A1を南下し、ハンブルグ、ブレーメン方面へ。道路がいいのに加え、標識も完璧だから、実際の移動距離よりも早く進んでいるような錯覚を抱いてしまう。ケルン、ドルトムントと大きな街を通り過ぎていく。

路面がいいと、乗員の疲労度合いも軽くなることが身を以て実感させられる。ハンドルやタイヤから伝わってくる振動と騒音が軽減する。土埃やゴミなどが少ないことから、窓ガラスが汚れず、視界に優れることもドライバーの負担を軽減する。特に、夕陽に向かって走る時にフロントガラスが汚れていると、眩しさと見づらさが重なってとても疲れる。

それも、ドイツに入ってからは少ない。夏だから、ぶつかった虫がつぶれるのは避けられないが、それもロシアよりは少ない。

画像: アウトバーンを疾走しながら見た、牧歌的なヨーロッパの風景。やはり、ロシアで眺め続けてきた「自然」がそのまま飛び込んでくるような原生的な景色とは、異なった印象として感じられた。

アウトバーンを疾走しながら見た、牧歌的なヨーロッパの風景。やはり、ロシアで眺め続けてきた「自然」がそのまま飛び込んでくるような原生的な景色とは、異なった印象として感じられた。

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