ストックホルム症候群の語源となった、スウェーデンの銀行立て籠り事件にヒントを得た、実話ベースの作品。
イーサン・ホーク、マーク・ストロングなどの実力派俳優が出演。

ストックホルム症候群の語源となった事件を映画化

ストックホルム症候群”(誘拐や監禁事件などの被害者が、犯人に好意を抱いてしまうこと)の語源となった、スウェーデン史上最も有名な銀行強盗・立て籠り事件を題材とした、実話ベースの作品だ。

主人公であり、服役中の友人を救出するために銀行強盗を行う男ラースをイーサン・ホークが演じ、彼によって人質となるが、徐々にラースに好意を寄せることになる銀行員の女性をノオミ・ラパスが演じている。
ラースは無法者でありながらも人を殺すことのできない柔弱さがあり、非情になりきれない。そんな彼の“弱さ”は人質に対する弱腰にもなり、警察に身元が割れてからは特に足元を見られることになるのだが、ノオミ演じる女性銀行員からの共感と親近感を得ることになる。

結局、ラースの試みは失敗に終わり、警察側の勝利となるのだが、ノオミ同様に観ている我々も 徐々に犯人が無事大金を得て逃亡に成功することを望むようになるのが不思議だ。
不思議なのだが、そこはイーサン・ホーク演じるラースの、不安定で未成熟な(人の良さを捨てきれない)悪人ぶりに起因しているとしか言いようがないだろう。

目指すのはスリルかリアルか?

前述の通り、本作は実際に起きたスウェーデンで発生した銀行強盗・立て籠り事件を題材にしている。

本事件は兇悪犯罪でありながら、人質にされた銀行員たちが犯人達に対して奇妙な連帯感を示していたことが話題になり、「監禁や誘拐などの極限的環境下で、自分たちの自由を束縛している当の本人である犯人に好意的な感情を抱く」傾向があることを、ストックホルム症候群と呼び、幾多の創作物のヒントを生むことになった。

まあ、犯人に好意を抱くかどうかは別にして、相当な心理的障害(PTSDと呼んでもいい)を受けることは間違いないとは思う。

本作は、クライムサスペンスとしての完成度やストーリー性を追うよりも、このストックホルム症候群が起きた事件を紹介する、という使命感によって構成されていると言える。

つまり、有名な心理障害を表す言葉の語源はこの事件ですよ、と示すことが重要であり、物語としての面白さを成立させることについてはあまり熱心ではないように思える。

イーサン・ホークやノオミ・ラパス、そしてラースが釈放を要求する犯罪者グンナー役のマーク・ストロングなど、芸達者な俳優陣の真剣な演技が本作の緊迫度を維持させているものの、全体的には スリリングさに欠ける描写に留まっている。しかし、それがリアルさを醸し出しているのも事実であり、それが本作の狙いなのだと言われれば、それはそれで納得できるものがある。

画像: 『ストックホルム・ケース』が示す、ストックホルム症候群の実際

小川 浩 | hiro ogawa
株式会社リボルバー ファウンダー兼CEO。dino.network発行人。
マレーシア、シンガポール、香港など東南アジアを舞台に起業後、一貫して先進的なインターネットビジネスの開発を手がけ、現在に至る。

ヴィジョナリー として『アップルとグーグル』『Web2.0Book』『仕事で使える!Facebook超入門』『ソーシャルメディアマーケティング』『ソーシャルメディア維新』(オガワカズヒロ共著)など20冊を超える著書あり。

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