年間100本以上の映画やドラマを鑑賞する筆者が独自視点で今からでも・今だからこそ観るべき または観なくてもいい?映画作品を紹介。
マーベルのMCUの世界観を引き継ぎ、“指パッチン”後の世界を描く『ホークアイ』。
生身の人間でありながら、超人的な身体能力と弓矢の腕前だけで地球の危機に立ち向かったホークアイことクリント・バートン(ジェレミー・レナー)と、彼に憧れる少女 ケイト・ビショップ(ヘイリー・スタインフェルド)の活躍を描く。
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MCUベースのヒーロー譚

さまざまな映画配給会社が挑戦しては撤退した、複数の映画作品を 同じ世界観と時間軸で統合するコンセプト。だが、大成功とうたえるのは元祖であり本家であるMCU(マーベル・シネマティック・ユニバース)だけかもしれない。集約したコンテンツとストーリー展開としてはアベンジャーズという、宇宙人との戦いに挑むヒーロー集団の物語で大成功を果たし、さらに個別のヒーローを主役とした単独映画をも大ヒット作品に仕上げている。

さらに、これまで人気を博していた“おなじみのヒーローたち”(例えばスパイダーマン)だけでなく、アイアンマンやアントマンなどのキャラクターにも一線級の知名度を与えることに成功しているからすごい。

ディズニーの配下となって、さらに強力なマーケティングパワーを得たマーベルにとって、MCUはそう簡単に手放せないドル箱だ。その証拠に、アベンジャーズシリーズが一旦終了したところで完結したかのように見えたMCUだが、動画配信サービス「Disney+」を主要拠点として、派生的作品が続々と作られているのだ。

その一つがこの『ホークアイ』。

クリスマスまでの数日で事件解決を目論み、家族団欒を求める元スーパーヒーローの、ある意味半分やる気のなさげな活躍を描いた作品だ。

アイアンマンやハルク、マイティー・ソーやキャプテン・アメリカなどのスーパーヒーローたちに混じって 生身のカラダながら、卓越した身体能力で地球の危機を救ったのがブラック・ウィドウことナターシャ・ロマノフと、ホークアイことクリント・バートン。
ナターシャは指パッチンによって消滅させられた人々を救うため命を落とすが、クリントは傷心を抱えながらも家族のために生き抜くことを決意する。
そして、ホークアイの活躍に恩義と憧憬を持つ若き女学生ケイト・ビショップの危機を、偶然救ってしまったことからクリントは ニューヨークを大混乱に陥れる事件に巻き込まれていく、というストーリーだ。

アベンジャーズシリーズの壮大な戦闘モードから、NYという局地的かつ人間同士の争いという、いわば著しくスケールダウンした戦いを以下にスリリングかつエキサイティングに描くかが見ものとなるが、ホークアイに憧れて 彼の弟子に名乗りをあげる若者の活躍を全面に出すことで、うまく調整している、と言えるだろう。

過去の清算と無謀な“弟子”に絆されるホークアイ

本作では、指パッチンによって一時は愛する家族を失い、自暴自棄になってしまったホークアイこと、クリントが過去の自分の所業(日本刀を武器に、仮面の男ローニンとして、ヤクザやギャングなどの反社会組織を誅殺しまくったこと)に嫌々向き合う様子や、ホークアイという存在に憧れ、自らも弓矢の技術を磨いてきた女学生ケイトの初々しい挑戦が描かれている。時期としては12月中旬、クリスマス本番の数日前、という設定だ。

クリントはローニン時代の自分の所業の落とし前をつけるため、ホークアイの後継者足らんとして無茶を続けるケイトを救うため、一刻も早く引退したいヒーロー業を続けざるを得ない。なんとしても家族とクリスマスを過ごしたいクリントは、やる気があまり出ないもののホークアイとしての活動を余儀なくされるのだ。(やる気なさげにしていることで、今回の敵がスケールダウン≒宇宙人→人間のギャング していることへの対応が為されていると言えるのかも?)

辛く厳しいヒーローの道

アベンジャーズシリーズを観た人は知っていると思うが、クリントは指パッチンにより家族を失い、同時にその快復の過程でかけがえのない友、ナターシャ・ロマノフを失う羽目になる。
本作では、クリントが胸に抱える大きな悔い(指パッチンによって心が荒みローニンとして裏社会の組織の粛清に走っていた時期に対する悔い、そして仕方なかったとはいえ、かけがえのない友人であるナターシャ・ロマノフの死を見送ることになってしまった悔い)に正面から向き合うと同時に、自分に憧れるあまり 家族や友人との温かい交流を時として犠牲にせざるを得ないスーパーヒーローの道を歩もうとする若者に対する戸惑いが描かれている。

そして、そんなクリントの惑いを承知の上で彼を崇拝するケイトの成長が本作のテーマだ。

ヒーローとして生きることはカッコいいことだけではない、非常に辛く苦しい道だ。まして、生身の人間が その道を進もうとするならば、厳しい肉体錬磨の鍛錬だけでなく、人として味わえる温もりを犠牲にしなければならないのだということなのだ。

本作はクリスマス映画?の立て付けなので、最後にはファミリーの団欒も描かれるのだが、それは限られた者への本当にレアな瞬間なのだと思わざるを得ないのである。

画像: 『ホークアイ』卓抜した弓矢の腕前だけで勝負する生身のヒーロー

小川 浩 | hiro ogawa
株式会社リボルバー ファウンダー兼CEO。dino.network発行人。
マレーシア、シンガポール、香港など東南アジアを舞台に起業後、一貫して先進的なインターネットビジネスの開発を手がけ、現在に至る。

ヴィジョナリー として『アップルとグーグル』『Web2.0Book』『仕事で使える!Facebook超入門』『ソーシャルメディアマーケティング』『ソーシャルメディア維新』(オガワカズヒロ共著)など20冊を超える著書あり。

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