年間100本以上の映画やドラマを鑑賞する筆者が独自視点で今からでも・今だからこそ観るべき または観なくてもいい?映画作品を紹介。
ベトナム戦争の数多くの血生臭い戦闘の中で、多くの兵士を救い自らは命を落とした1人の空軍兵の名誉を讃えるヒューマンドラマ、『ラスト・フル・メジャー 知られざる英雄の真実』。ウィンター・ソルジャー役でブレイクを果たしたセバスチャン・スタン主演だが、ベトナム帰還兵としてウィリアム・ハート、エドテンハリスやサミュエル・L・ジョンソン、ピーター・フォンダなど多くの名優が脇を固めている。
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画像: 映画『ラスト・フル・メジャー 知られざる英雄の真実』予告編 youtu.be

映画『ラスト・フル・メジャー 知られざる英雄の真実』予告編

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実在するベトナム戦争時の英雄の、切ない偉業を辿るヒューマンドラマ

MCUのアベンジャーズ・シリーズでウィンター・ソルジャーことバッキー・バーンズ役を熱演したセバスチャン・スタン主演の本作は、実在の名誉勲章受賞者 ウィリアム・H・ピッツェンバーガーが戦死から30年以上経ってようやく受賞したという史実をベースに作られたドラマだ。

スタンが演じるスコット・ハフマンは、国防総省の若手官僚。彼は出世に響く仕事は巧みに避け、誰よりも早くトップに上り詰めようと走る野心家だったが、あるとき米軍最高の栄誉である名誉勲章に値する働きをしながらも、無視され続けている空軍下士官ウィリアム・ピッツェンバーガーの存在を知り、彼の生き方と死に様に強く感銘を受ける。
米空軍空輸救助隊のメンバーだったピッツェンバーガーは、ほぼ間違いなく戦死すると知りながらヘリから戦場に降り立ち、9名の戦傷者を救出しながらも、本人は5発もの銃弾を受けて帰らぬ人になったのだ。

スコットは出世コースから外れてしまうと思いながらもピッツェンバーガーになんとか名誉勲章を授与させたいと、必死に調査を続ける。そして彼によって命を救われた帰還兵たちやピッツェンバーガーの両親らとの交流によって、この世には出世よりも大切なものがあるということに、改めて気づいていくのだった。

正気の沙汰とは思えないほどの勇気に感動する

本作は、30年以上も無視され続けてきた、孤独な英雄の偉業が再評価を受ける過程をドラマ化したものだ。

ピッツェンバーガーの勇気ある行動を調査する主人公スコット役は、本作が初主演のセバスチャン・スタンが配されているが、ピッツェンバーガーに恩義を感じるベトナム帰還兵たち(つまり、この時点で既に老人である)としてウィリアム・ハートや、サミュエル・L・ジャクソン、エド・ハリスなどの超ベテランが脇を固めることで、非常に重厚なドラマになっている。もちろん、ややストーリー展開や表現に無理があるのでは?と思わせるところもあるにはあるが、細かいところは気にしないで、ピッツェンバーガーが成し遂げたことの凄さ、素晴らしさを描こうとした制作者たちの想いを受け止めるべきだろう。

特に、(上述のメンバーらは当たり前ながら誰も出てはこないが)ピッツェンバーガーが戦場に降り立ち戦死するまでの奮闘ぶりを、さまざまな負傷者たちの時点で描いた、ベトナムのジャングルでの戦闘シーンは、実に激しく悲壮感に溢れており、決して見逃せない出来栄えだ。逆に言えばジャングルでの死闘が激しければ激しいほど、ピッツェンバーガーの勇気に強く感銘を受けてしまうのである。

自分の命を救いに来てくれた者に対しておよそ釣り合うものではないが、ヘリから降りてきたピッツェンバーガーを見て、地上で決死の銃撃戦を繰り広げていた多くの兵士たちは、『こいつ、正気か?』と思ったという。
それだけ、そのときの地上は地獄そのもののような様相だったということだ。

ただただ畏敬の念を抱く

本作は、ベトナム戦争終了後30余年経ってから、名誉勲章を受けることになった空軍下士官 ウィリアム・ヒル・ピッツェンバーガーの実話に基づく映画であるが、彼の受賞に至るまでのプロセスに関しては完全な創作ということになっており、さらに言えば「実話ベースの製作」というようなクレジットが前面に出されることもない(そもそもそういうクレジットがないのかもしれない)。

つまり、実在の人物とその業績を描いてはいるが巧みにエンターテインメント的なプロットを被せて虚実を混ぜた作品だ。

その出来に関してあれこれ考えることは容易いが、僕が思うに単にピッツェンバーガーが示した勇気に感動しておけば良い。
単にアドレナリンの暴発による行動とはいえない、信念に支えられたピッツェンバーガーの行為の軌跡と、そのおかげで命を拾った人々の深い感謝に対して、畏敬の念を抱く、それだけで良いと思うのである。

画像: 『ラスト・フル・メジャー 知られざる英雄の真実』30年以上にわたる、ベトナム戦争の英雄の復権を求めた闘い

小川 浩 | hiro ogawa
株式会社リボルバー ファウンダー兼CEO。dino.network発行人。
マレーシア、シンガポール、香港など東南アジアを舞台に起業後、一貫して先進的なインターネットビジネスの開発を手がけ、現在に至る。

ヴィジョナリー として『アップルとグーグル』『Web2.0Book』『仕事で使える!Facebook超入門』『ソーシャルメディアマーケティング』『ソーシャルメディア維新』(オガワカズヒロ共著)など20冊を超える著書あり。

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