Sinn
1961年にドイツ軍パイロットで飛行教官も務めたヘルムート・ジンが、自身の名前を関するパイロットウォッチを作り始めたのが始まり。「ジン」の正式名はドイツ語で「ジン スペツィアルウーレン」。日本語では「ジン特殊時計会社」で、その名の通りどんな特殊な状況でも最高の精度を保証する時計を製作している。
とある時計ブランドの救世主・ジン
当連載初登場となる「ジン」は、20万円〜100万円台まで多数のラインナップを誇るドイツの時計ブランドだ。創業者のヘルムート・ジンがドイツ軍のパイロットであったことから、コレクションにもミリタリー要素が色濃く反映されており、過酷な環境でも視認性・機能性を損なわない実用性重視のモノづくりを徹底している。
今回ご紹介するのはジンの「ナビゲーションクロノグラフ」コレクションに位置する1本。『903.ST.AUTO』だ。
![画像: 903.ST.AUTO](https://d1uzk9o9cg136f.cloudfront.net/f/16783497/rc/2023/02/07/4e1e504d97b44e3688b7ad2c008f09aa73c05cc0.jpg)
903.ST.AUTO
ブライトリングのナビタイマーにそっくりな理由は?
生粋の時計ファンであれば本モデルが辿ってきた歴史をご存知かもしれない。しかし多くの方は本モデルのデザインを見て、「ブライトリングのナビタイマーにそっくり」だと指摘するだろう。
▶︎▶︎ナビタイマーはこちら
これは真似でもなんでもなく、ナビタイマーのデザインおよび部品を使う権利をジンが持っているからに他ならない。なぜそんなことが起きたのか?
時は1969年、日本の時計ブランド・セイコーが引き起こした「クォーツショック」で機械式時計を手がける海外ブランドは大打撃を受けた。これはブライトリングも例外ではなく、あわや倒産の危機に。
そこで同ブランドがとった施策が『ナビタイマー』の意匠および各種パーツを使う権利を売りに出すことであった。(権利譲渡ではないのでブライトリング自体もナビタイマーの販売はできる)。
その権利を買ったジンは『903』というコレクションで、いわばジン版のナビタイマーを販売する。当時はブライトリングからパーツ供給も受けていたため、『903』のムーブメントにブライトリングの文字が刻印されていたりしたことも。
現在でもそのデザインはほとんど変わらないが、『903』には実用性重視の時計を目指すジンだからこそのこだわりが取り入れられている。
![画像: 12時位置にはブランドロゴ。針やインデックスは日焼けしたかのような色合いに染められている](https://d1uzk9o9cg136f.cloudfront.net/f/16783497/rc/2023/02/08/45e47d80acd3dad6d8d261d353de6c51f4e76b5d.jpg)
12時位置にはブランドロゴ。針やインデックスは日焼けしたかのような色合いに染められている
![画像: 4時と5時の間にはデイト表示](https://d1uzk9o9cg136f.cloudfront.net/f/16783497/rc/2023/02/08/caa78a08ec1e9aa6ee2aee07f23ee9298f8f80cf.jpg)
4時と5時の間にはデイト表示
![画像: 文字盤外周のスケール。速度、距離、燃料消費、上昇および下降速度をはじめ、マイルやキロ換算など多数の情報がここから読み取れる](https://d1uzk9o9cg136f.cloudfront.net/f/16783497/rc/2023/02/08/9bb8e42d039079705be4b2fc4bef9b8a40f3b362.jpg)
文字盤外周のスケール。速度、距離、燃料消費、上昇および下降速度をはじめ、マイルやキロ換算など多数の情報がここから読み取れる
それは高い防水性だ。
ブライリングの『ナビタイマー』はインナーベゼルを直接回転させる機構を取っているのに対して、『903』は10時位置のリューズ操作で回転させる仕組みに。3時位置のリューズにもねじ込み式を採用するなど、随所で時計の密閉性を高くする工夫が施されており、100M防水を実現している。※ナビタイマーは30M防水
![画像: インナーベゼルは10時位置に配置されたリューズで操作する](https://d1uzk9o9cg136f.cloudfront.net/f/16783497/rc/2023/02/08/da70e3c4d52324b835d899aac6d334b132916223.jpg)
インナーベゼルは10時位置に配置されたリューズで操作する
![画像: 時計右側にはクロノグラフ操作用のプッシュボタンとリューズを配置](https://d1uzk9o9cg136f.cloudfront.net/f/16783497/rc/2023/02/08/4e96fe8e9ee37a72f79d3c8cd62c5ba9643e66fe.jpg)
時計右側にはクロノグラフ操作用のプッシュボタンとリューズを配置
![画像: インナーベゼルの回転機構を取り入れたり、高い防水性を確保したことによってケースには若干厚みがある](https://d1uzk9o9cg136f.cloudfront.net/f/16783497/rc/2023/02/08/82dc81f195c7d07b7b6ed4c25119e630546921c7.jpg)
インナーベゼルの回転機構を取り入れたり、高い防水性を確保したことによってケースには若干厚みがある
こう見ると機能性ではジンの方が上? と思ってしまうが、防水性に関してはブランドが持つ方向性の違いのため、どちらが良い悪いという話ではない。ブライトリングはパイロットウォッチにそこまで高い防水性を必要としていないのに対し、ジンはどんなモデルにおいても「過酷な環境での実用性」を重視するブランドとして、パイロットウォッチにも防水性を求めたわけだ。
![画像: スイスのムーブメントメーカー「ラ・ジュー・ペレ」のムーブメントを採用](https://d1uzk9o9cg136f.cloudfront.net/f/16783497/rc/2023/02/08/0d519d2e807a19ff920d52f404ab5e9d41a1d5f3.jpg)
スイスのムーブメントメーカー「ラ・ジュー・ペレ」のムーブメントを採用
![画像: 各所に記載されているドイツ語での機能表示](https://d1uzk9o9cg136f.cloudfront.net/f/16783497/rc/2023/02/08/bb20693f30f76bd31569c606be7185ed26b2cd87.jpg)
各所に記載されているドイツ語での機能表示
![画像: 5連ブレスレットでラグジュアリーさをプラス](https://d1uzk9o9cg136f.cloudfront.net/f/16783497/rc/2023/02/08/3848b77c77dc000dd159acdde9b4cc381ae4785b.jpg)
5連ブレスレットでラグジュアリーさをプラス
![画像: コマは六角レンチで調整可能。時計専用の工具がなくとも調整できる汎用性の高さが魅力](https://d1uzk9o9cg136f.cloudfront.net/f/16783497/rc/2023/02/08/7e3cf6e9b919761faaff1a684bc0233ec5f629c2.jpg)
コマは六角レンチで調整可能。時計専用の工具がなくとも調整できる汎用性の高さが魅力
シースルーバックからは、スイスの高級ムーブメントメーカー「ラ・ジュー・ペレ」が手がけたクロノグラフムーブメント『LJP8000』が楽しめる。その外周には「NABIGATIONSUHR(ナビゲーションクロック)」「ANTIMAGNETISCH(耐磁)」など時計の機能を表す言葉がドイツ語で刻印されている。
ブレスレットは5連でパイロットウォッチながらも華やかな印象だ。それぞれのコマには六角レンチ用の穴がサイドに設けられており、時計専用工具でなくとも調整ができる仕組みになっている。
![画像: ブライトリングのナビタイマーにそっくりな理由は?](https://d1uzk9o9cg136f.cloudfront.net/f/16783497/rc/2023/02/08/fa0682779fe9761867fb1467b97ba8fba209234b.jpg)
本モデルは最近登場した新しいモデルながら、針やインデックスはあえて日焼けで退色したかのようなカラーに染められており、アンティーク的な雰囲気も併せ持つ。
実用性はもちろん、歴史的背景もしっかりとある1本。スイス時計とドイツ時計のいわばハイブリッド的な『903』を、ぜひあなたの腕に巻いてみてほしい。
Sinn
903.ST.AUTO.B.E
品番:903.ST.AUTO.B.E
素材:ステンレススチール
サイズ:縦41㎜×横41㎜
防水:100M防水
ムーブメント:自動巻き
文字盤:ダークブルー×ホワイト
販売価格:418,000円(税込)※USED
参考定価:726,000円
【付属品】
外箱、内箱、取扱説明書、国内正規保証書(2022年3月)、工具、替えの純正革ベルト等が付属
※価格は2023年2月現在のMOON PHASE銀座店・販売価格です。
MOON PHASE 〜STAFF VOICE〜
ジンはいわばブライトリングにとっての救世主なのですが、そのあたりのことって割とセンシティブ(?)なので両ブランドのサイトなどには書かれていません。そのためひどい話ですが、なかには「ジンが真似した」などという声も……。
もしそう思っていた方がいるのでならば、当記事がその誤解を解くきっかけになれば幸いです。
さて、ジンの『903』は前述したとおり歴史的なストーリーがしっかりとある1本です。そして何より手の届きやすい価格帯なのも嬉しいところ。防水性も100M防水を確保しているため、普段使いはもちろん、アウトドアアクティビティなどで着用していても安心です。
すでにブライトリングのナビタイマーをお持ちの方は、ブランド毎の特色を交互に楽しむなんてのも面白いかもしれません。お店にはナビタイマーも各種取り揃えておりますので、ぜひその違いを店頭で見てみてください。
所在地 | 東京都中央区銀座1-6-6 GINZA ARROWS1F |
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TEL | 03-5250-7272 |
営業時間 | 11:00〜19:00(日曜祝日〜18:00まで) |
定休日 | 水曜日 |
公式サイト | https://moon-phase.jp/ |