バング & オルフセンとは
1925年の創業以来、機能美を追求したオーディオ・ビジュアルブランドとして高い評価を得ているバング & オルフセン。同ブランドが手がける製品は、“オーディオの効果を最大限に引き出すもっともシンプルな形”を目指しており、その様はまるで美術品のよう。事実ニューヨーク近代美術館にはその製品が展示されており、洗練されたデザインは多くのユーザーから高く評価されている。
生活空間に馴染むデザインの妙
その美しさ、存在感から一度配置すればその空間を支配してしまいそうだが、バング & オルフセンの妙は空間に溶け込ませる点にある。それはアルミやウッドといったマテリアルを絶妙なバランスで使っていること、使用しないときはよりシンプルな形に変形すること、視覚に入るケーブル類を排除していることなど、その配慮は多岐に渡る。
バング & オルフセンの音はただひとつ
バング & オルフセンのオーディオ機器は、1万円代のものから990万円(ともに税抜)のものまで、ひとりのトーンマイスターによって調整される。通勤中にイヤホンで聴く音、キッチンでBluetoothスピーカーから流れる音、リビングに構築したホームシアターシステムまで、どのスピーカーからも「バング & オルフセンの音」が鳴るようになっている。つまり、その音が気に入れば、今後スピーカーを増やしていったとしても、違和感なく溶け込んでくれるわけだ。
その音を実際に体感して
映画館?いや、映画の“中”にいます。
2019年9月末、東京・青山のグランムーヴ・ジャパンラウンジにて、バング & オルフセンの特別体験会が行われ、筆者である私もそこに行ってきた。同ブランドの製品を紹介する以上、自分で体感しておかなければならない…という使命感があったからだ。(ただ聴きたかったのである)
会場には同ブランド最高峰のテレビ・サウンドシステム「Beovision Eclipse(ベオビジョン エクリプス)」、リスナーの座る位置に合わせて最適な音を届ける「Beolab 50(ベオラブ50)」、ワイヤレスによる接続にも対応した、電源ケーブル1本でも繋げられる「Beolab18(ベオラブ18)」、これら3種類による音響空間が構築されていた。
音源として選ばれたのは、映画「ボヘミアン・ラプソディ」から、「We will rock you」の誕生シーン。筆者は映画館にて2回ほど観ており、その興奮も熱狂も体験済みである。はたして……。
シーンが再生される。メンバー間の軽妙なトークを挟み、同曲の醍醐味である足踏みの音が広がっていったかと思いきや、体験会のその場は一気にライブ会場へ! 会場の反響音、歓声、拍手、足踏み、そしてフレディ・マーキュリーの歌声とバンド演奏。
熱狂の只中に自分がいる。ここはアリーナ席だろうか。周囲を見渡せばスタンド席には拍手と足踏みを繰り返す観衆が。重低音により身体に響く振動は、まさにライブ会場を震わす歓声や足踏みのそれである。
シーンが終わり感想を求められた瞬間に出たのは「…え?」という我ながら間抜けな一言。一瞬何が起きたかわからなかった。ライブ会場にいたはずの自分がなぜソファに座っているのか。
まさに没入感。この数分の間、私は確かに映画館に、いやライブ会場にいた。それは音の効果だけでなく、ベオビジョンの有機ELが表現する美しい描写が違和感なく目に入ってきたからでもある。
また、体験中には気づかなかった(それが逆にいいと思っている)が、シーンに没入した要因のひとつに、空間に対する違和感のなさがある。テレビの左右に高さ103.6㎝のスピーカー(ベオラブ50)が並んでいるにも関わらず、いま思い返してもシーン以外に目に入ってきた記憶がない。それほど各製品は空間に溶け込んでいたことを付け加えておきたい。