生理用ナプキンが買えずに、不衛生な布で処置をしている最愛の妻を救うために立ち上がった一人の男
主人公のラクシュミは、ショックを受けた。結婚したばかりの最愛の妻が、生理の処理のために雑巾と変わらない不衛生な布を使っていたからだ。
見かねた彼は街で外国製の生理用ナプキンを買って戻るが、妻はそんな高いものを買うなんて信じられない、とラクシュミをなじり、それを使おうとしない。
そこで、ラクシュミは誰にでも買える、清潔なナプキンを作ろうと決意する。そもそも女性蔑視、差別意識が強かったインドにあって、その行為は周囲から奇異の目で見られるだけでなく、彼自身が強い差別と迫害にさらされることになったが、それでもラクシュミは安価な国産ナプキンの開発を諦めようとはしなかった。
愛のために、世間の目を気にすることなく“戦い”に身を投じた男の挑戦を描いた、実話を基にした作品。
インドの小さな村で新婚生活を送る主人公の男ラクシュミは、貧しくて生理用ナプキンが買えずに不衛生な布で処置をしている最愛の妻を救うため、清潔で安価なナプキンを手作りすることを思いつく。研究とリサーチに日々明け暮れるラクシュミの行動は、村の人々から奇異な目で見られ、数々の誤解や困難に直面し、ついには村を離れるまでの事態に…。それでも諦めることのなかったラクシュミは、彼の熱意に賛同した女性パリーとの出会いと協力もあり、ついに低コストでナプキンを大量生産できる機械を発明する。農村の女性たちにナプキンだけでなく、製造機を使ってナプキンを作る仕事の機会をも与えようと奮闘する最中、彼の運命を大きく変える出来事が訪れる――。
味方がまったくいない中で、悪しき慣習打破に挑戦する男の原動力は
ラクシュミの挑戦は、高価な外国製ナプキンの素材を分析することから始まった。それが自分でも作れるものであると考えた彼は、自ら素材を集め、試作品を作る。もちろんそれは簡単なことではなく、失敗を繰り返しながら、理想の製品作りを目指す。
彼の原動力は妻への愛。不潔な布をあてがうことで病気になったり不妊の原因を作ったりすることを知った以上、そんなことを続けさせることはとてもできない相談だった。インドならではの固定観念(生理は穢れの期間であるとか、生理用品のことを口にするのも恥であるなど……)から家族でさえも(妻からさえも)ラクシュミの行為は疎まれるが、そのまま放置していること自体が彼女への愛を失うことだと彼は考えた。
愛する妻を病気にしたくない。その一心で、ラクシュミは社会全体が抱える差別意識や女性蔑視の固定観念などの分厚い壁を突き破ることを決意し、やり遂げるのである。
ちなみに、妻を始め、さまざまな女性に自分が作ったナプキンの被験者になってくれるよう頼むラクシュミは、ことごとく断られ、大きな挫折を味わうが、やがて自分自身で着用してみることを思いつき、実践する。このあたりのエピソードは、ユニ・チャームの高原創業者にも共通するものだ。
その後、手作りではなく、安価な機械による大量生産を試みることで、全インドの女性に安価で清潔な国産ナプキンを行き渡らせるという新たな目標を持つ。妻を幸せにしたいという想いはやがて5億人のインド女性を救うという、壮大な意識を生むのである。
社会的因習と戦いつづけた男の挑戦を描いた本作は、21世紀の実話を基にしており、1人の起業家のサクセスストーリーとしてではなく、アイデアや信念が世界を変革できるという実例を我々に見せてくれる。
小川 浩 | hiro ogawa
株式会社リボルバー ファウンダー兼CEO。dino.network発行人。
マレーシア、シンガポール、香港など東南アジアを舞台に起業後、一貫して先進的なインターネットビジネスの開発を手がけ、現在に至る。
ヴィジョナリー として『アップルとグーグル』『Web2.0Book』『仕事で使える!Facebook超入門』『ソーシャルメディアマーケティング』『ソーシャルメディア維新』(オガワカズヒロ共著)など20冊を超える著書あり。