ドゥーガル・ディクソンさんの本を児童向けに編集した少し変わった本「新恐竜 絶滅しなかった恐竜の図鑑」が2019年8月29日に学研さんから発売されました。元々を知ってる方が多く、話題になっているので紹介しちゃいます。
連載コラム「生田晴香、恐竜と生きる」。福井恐竜博物館 公認恐竜博士、古生物学会友の会・恐竜倶楽部メンバーでもある自他共に認める恐竜ラバーのタレント生田晴香が、恐竜の素晴らしさを隅から隅まで語り尽くす。壮大な歴史とドラマ、未解明の不思議が交差する魅惑の恐竜ワールドへ、ようこそ。- dino.network編集部
もしも隕石が衝突しなかったらその後の世界はどうなっていたのか?
今から約6600万年前の6月初旬、ティラノサウルスやトリケラトプスが生息していた時代にメキシコのユカタン半島に隕石が衝突しました。
それは直径10kmほどの隕石で秒速20km/秒という速度で北北西に向かって突入し、それによって大量のチリなどが太陽の光を遮り植物が育たなくなったりして動物は大量絶滅し、恐竜も鳥類以外は絶滅してしまいました。(鳥類は恐竜類に含まれるんですよ!)
この時、もし隕石が地球に衝突せず恐竜が絶滅していなかったら、その後どうなっていたでしょうか。
鳥類以外の恐竜が絶滅してくれたおかげで哺乳類が大きくなる事ができ、私たち人間という生き物が誕生できたわけなので、絶滅してくれてよかったと思う方がいるかもしれません。
しかしそのまま恐竜が生き続けていたら、今とは異なる未来が待っていたかもしれません。
その場合どのような姿の恐竜に進化していると思いますか?
上の写真で再現されているのは、古生物学者のデイル・ラッセル博士が考えたのディノサウロイド(恐竜人間)と呼ばれることでも有名な「もし頭のいいトロオドンが絶滅せずに生きていたらこんな姿だろう」という仮説を実体化したものです。
一方で、同じく古生物学者のドゥーガル・ディクソンさんは「もし隕石が衝突せずに恐竜が絶滅しなかったら?」を考え、今から約40年前に本にしています。
今回学研さんから発売された「新恐竜 絶滅しなかった恐竜の図鑑」は、その本を児童書版に編集したものです。イラストを大きくし、まずは絵を見て面白がってもらってから後ろにまとめた解説ページを読んでもらおうと子どもにもとっつきやすい工夫がされた構成になっています。
実際に読んでみるとそこまで子ども向けというわけではなく、大人も楽しめるちょうどいい読みやすさになっていました。
今回発売された児童書版「新恐竜 絶滅しなかった恐竜の図鑑」を担当なさっている学研の編集者・目黒さん曰く、少年ジャンプの読者層のようにに子どもの親世代にも幅広く楽しんでもらえるよう「子ども子どもさせてはない」とのことです。
実際に本の中ではルーツとなった本当にいた恐竜や、最新の恐竜研究要素も取り入れられており、誰が読んでも楽しめる内容に仕上げられています。
ちなみに、目黒さんは普段は児童書を主に担当しているのですが、何十年か前の大学生の時に読んだ「新恐竜 絶滅しなかった恐竜の図鑑」を見て、こういう本を作りたいと感じたことが編集者になりたいと思ったきっかけだそうですよ!
ドゥーガル・ディクソンとは
それではここで、原作著者であるドゥーガル・ディクソンについてご紹介します。彼はスコットランドの古生物学者で、サイエンスライターです。子どもの頃に恐竜が登場する漫画を読み生物に興味を持つようになったそうです。
実際には6500万年前に滅亡してしまった恐竜がもさ進化を続けたならばという仮説を描いたディクソンさんの著書が「新恐竜」ですが、彼が考えたのはそれだけではありません。
ディクソンさんが考えた空想の未来動物図鑑には、他にも「もし人類が滅亡したら?」という切り口で5000万年後の地球の生態系を描いた「アフターマン」、そして「もし人類が滅亡せず生き残ったら?」という仮定で500万年後の人類の姿を描写する「マンアフターマン」があります。
「アフターマン」はNHKのみんなのうたになったり、地上波で特集が組まれたりしているため、見かけたことがある方も多いかもしれません。
図鑑に登場する恐竜たちはそれぞれ不気味要素も含んでいますが、それだけに留まらず、イラストが幻想的で美しいんです。図鑑に登場する空想動物の事をファンの間では「ドゥーガロイド」と呼ばれ親しまれていますが、なんだか思わずかっこいい呼び名で呼びたくなっちゃう不思議な魅力があるんですよね。
では、今回発売された「新恐竜 絶滅しなかった恐竜の図鑑」の中身をみていきましょう。
「新恐竜 絶滅しなかった恐竜の図鑑」の世界
6600万年前、隕石が衝突せず地球の脇をすり抜けていきます。恐竜や他の様々な動物も生き続け繁栄を続けます。
大陸が分裂し環境が変化し、開けた草原が発達し気候は寒冷化しました。それに対応できなかった動物は絶滅します。それから陸地は6つのエリアに分かれました。
そんな新しい世界ではどんな新恐竜がいるのか、紹介していきます。
カットラスツース
表紙にも選ばれている、新熱帯区に生息する羽毛が生えている肉食恐竜です。獣脚類のノアサウルスから進化しました。
口先の歯は長くまるでサーベルタイガーみたいですね。口先の歯が抜けると後ろの歯がスライドして置き換わる仕組みとなっております。
歩行性の竜脚類を襲っていましたが、それらが絶滅すると全長25メートルほどの草食恐竜ランバー(という名のドゥーガロイド)のような動きが遅いものを襲うようになります。群れでランバーをずたずたに切り裂いて出血多量で殺すのです。
モノコーン
モンタノケラトプスという小型の角竜から進化した草食恐竜で、群れになると草を根こそぎ食べ尽くすので食料を求め常に移動し続けなければなりません。
姿はモンタノケラトプスと大きく変わっているように見えますが基本的な体の作りはほとんど変化していません。
鼻の上の角は強力な武器ですが、雄同士リーダー争いをする時は相手を傷つけないよう大きくて長いえり飾りを使って押し合います。
地球の流れなどちゃんと考えられていて、面白いですね。ここまでみてしまったら他のドゥーガロイドも気になってきたでしょう。早速本を手に取ることをオススメします。
実は今回紹介した本の編集者、学研の目黒さんにインタビューしてきたので、目黒さんのドゥーガロイド愛について動画を見たい方はこちらからどうぞ。
生田晴香 | Haruka Ikuta
恐竜タレント。TV、CMのほかモデルとして活躍中。福井恐竜博物館の公認恐竜博士で恐竜検定所持。恐竜トークショー、クイズ、鳴き声コンテスト審査員。古生物学会友の会&恐竜倶楽部メンバー。恐竜のうた「ダイナソーDANCE」監修。実は元あやまんJAPAN。
YouTubeちゃんねる「恐竜わっしょい!」始めました。