こんにちは、恐竜おねえさんこと生田晴香です。去る10月15日は化石の日という事であちこちで化石の日イベントが行われていましたが、楽しく参加できましたでしょうか?!今回は、色の他にも色々面白い事がわかっていて全身発見されている恐竜、その名も「アンキオルニス」を紹介します。

連載コラム「生田晴香、恐竜と生きる」。福井恐竜博物館 公認恐竜博士、古生物学会友の会・恐竜倶楽部メンバーでもある自他共に認める恐竜ラバーのタレント生田晴香が、恐竜の素晴らしさを隅から隅まで語り尽くす。壮大な歴史とドラマ、未解明の不思議が交差する魅惑の恐竜ワールドへ、ようこそ。- dino.network編集部

アンキオルニスとは?

2008年に命名された「アンキオルニス(Anchiornis huxleyi)」は、“鳥類に似たもの”という意味を持ちます。「アンキ」が近い、「オルニス」が鳥類という意味の組み合わせで、名前の意味の通り鳥類に近い恐竜です。

分類としては獣脚類のコエルロサウルス類で、トロオドン科に分類されます。

トロオドン科は、トロオドンを含む恐竜のグループのひとつですが、トロオドンは頭がいいことで有名な恐竜でもあります。現在ではトロオドンという学名が疑問名となり、ある意味存在が消えてしまったのですが……ちょっと話が逸れてしまいますので、詳しくはこちらをご覧ください!

画像: 知能が高い「トロオドン」もし絶滅していなかったら… youtu.be

知能が高い「トロオドン」もし絶滅していなかったら…

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お話をアンキオルニスに戻します。

アンキオルニスは中生代ジュラ紀後期、始祖鳥(鳥類)と同じか少し前くらいの時代の中国に生息していた肉食恐竜で、全長(頭からしっぽまでの長さ)は35センチ程度だったと推測されています。

化石に羽毛……

下のアンキオルニスの化石をよく見てみてください。羽毛の跡が残っているのがわかりますでしょうか。

よーく全体を見ると、なんと!前あしに翼があるだけではなく後ろあしにも翼があるあるのです!こういう生き物はなかなか現代では見れませんよね。ぜひその姿、生で見てみたいものです。

羽毛恐竜自体なら他にもヴェロキラプトルユンティラヌスなどいくつか発見されていますが、アンキオルニスの凄いところは、その羽毛の痕跡から全身の体の色がわかっているところです。

アンキオルニスなど、恐竜の色は皆さんは何色だと思いますか?

よくある恐竜グッズでは茶色や緑にされている事が多いので、恐竜といえば緑かな?と想像する方も多いと思います。個人的には黄色が好きなので黄色の恐竜がいてほしいと願うばかりですが、はたしてアンキオルニスに黄色は部分的にも含まれているのでしょうか。答えは残念ながら「いいえ」です。

そもそもなぜ色がわかるのかというと、アンキオルニスの羽毛には「メラノソーム」と呼ばれる色素細胞が奇跡的に残されているのですが、そのメラノソームの形状や配置を調べ、今いるたくさんの鳥類の羽毛と比較する事で、これまでわかっていなかった恐竜の色を復元する事ができるのです。

ある程度の条件が揃っていたからとといって全ての羽毛恐竜の色がわかるわけではなく、実際にはほとんどわからないことが多いので、わかっているのは本当に奇跡的なことなんです。

ではそろそろ何色だったか答えを発表します。

natgeo.nikkeibp.co.jp

アンキオルニスの体全体は黒、頭(モヒカンヘアー風)は赤い羽毛、頬には赤い斑点、前あしと後ろあしの翼は黒と白のシマシマになっていると、2010年にアメリカ・イェール大学の研究で発表されています。部位によって色はバラバラなのですね。

自分が生きているうちにその事がわかるなんてとても幸せで、日々こういうニュースが出てきてそれを喜んだりするのが人生の楽しみでもあります。ですが、もしかしたら実際は違うかもしれませんし、このように「絶対に正解」とは断言できないことで日々勉強で飽きがこないところが恐竜にロマンを感じるところですね。これだから恐竜は最高に楽しいのです。

ちなみに、他の恐竜でも色がわかっているのはいますが「黄色」とわかっている恐竜はまだいません。これからもしかしたらわかってくるかもしれないのでそれが生きる楽しみにもなりますね。もし危篤状態になっても「黄色い恐竜が現れるまで死ねん…」と必死になって生きねば…と足掻いているでしょう。

ペリットってなんだ?

上の部分が頭で下が首です。

アンキオルニスの化石には他にも面白い事がわかっています。喉の所をよく見てみましょう。パッと見てもよーく見ても一見全くよくわからない感じがしますが実はこの部分、詰まった魚やトカゲの骨です。何を食べていたかわかること自体もすごいのですが、なんと!これはペリットと思われる痕跡だとわかっているのです。

ペリットというのはゲボといいますか、つまり吐き戻しです(食事中の方すみません)

飛べる鳥類は体を軽くする習性があり、消化しにくいものを食べると塊状にして吐き出す事があります。それが恐竜のアンキオルニスにもみられ、体を軽くしていたという事がわかります。

木の枝から木の枝へ滑空して移動していたのではないかと予想していましたが、これはもしかしたら翼の表面を広げてパタパタと飛べていたのかもしれませんね。実際どうだったのかはまだまだ謎ではありますが、可能性はあるでしょう。

ちなみに、ペリット化石は他にも発見されていますが、アンキオルニスのものが今のところ発見されている化石で最古のペリットとなります。

言うまでもなく、とてつもなく大変珍しい化石です。こんなにも色々わかっていて本当に面白いですよね(研修者に拍手!)

まとめ

  • アンキオルニスは鳥類に近い羽毛恐竜で、全身が見つかっている。
  • 化石からわかる事は色々あり、ほぼ全身の色がメラノソームからわかっている。
  • 喉と腹の部分に魚やトカゲのペリット痕跡があり吐き戻しをしていたという事もわかる確実にレアな化石!
画像: トサカをイメージしているポーズ

トサカをイメージしているポーズ

素晴らしい!アンキオルニスさんに拍手!!

画像2: 奇跡のアンキオルニスの化石は、意味を知るほどに面白い

生田晴香 | Haruka Ikuta
恐竜タレント。TV、CMのほかモデルとして活躍中。福井恐竜博物館の公認恐竜博士で恐竜検定所持。恐竜トークショー、クイズ、鳴き声コンテスト審査員。古生物学会友の会&恐竜倶楽部メンバー。恐竜のうた「ダイナソーDANCE」監修。実は元あやまんJAPAN。
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前回の「生田晴香、恐竜と生きる」はこちら

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