田村由美先生の新感覚ミステリーコミック『ミステリと言う勿れ』。主人公は髪モジャが特徴の、博識な大学生 久能整(くのう ととのう)君。普通の人ならうっかり見逃す些細な違和感になんとなくこだわってしまうがゆえに、周囲からはうざがられてしまうものの、さまざまな事件の真相に不思議とたどり着く名探偵ぶりを見せる。
© Shogakukan Inc. 2015 All rights reserved.

新感覚なミステリー『ミステリと言う勿れ』

収集のつかない天然パーマは決して整わないけれど、日常の裏に潜むさまざまな矛盾を その鋭い好奇心と観察眼で綺麗に整えていくのが、一人暮らしの大学生久能 整(ととのう)。

茫洋とした、一見その辺にどこにでもいる天然ボケの青年のように見える整君の姿に、周囲の人間たちは善人も悪人も皆 最初は舐めてかかるし、次第にその細かすぎる観察力にうざがるようになる。

しかし、やがて彼の注意深さや、些細な論理の矛盾や破綻に気づき、それを整えようとする彼の生来の几帳面さが、善人の窮地を救い悪人の狡知を挫いていく。

そんな不思議極まりない展開の、新感覚なミステリーストーリーが本作、『ミステリと言う勿れ』だ。

長く付き合うに足る深みのある主人公なのだが、その魅力にたどりつくのは難しい?

本作の主人公 久能整は、前述の通り、整うことのない天然パーマと、話し出すとすぐにわかるその細かさというか、普通の人なら“どうでもいい”と思いがちになるだろうところを気にし続ける、ある種のしつこさに閉口したくなる、確かに付き合い難さを感じる青年だ。
(その意味では、他のミステリーモノの探偵たちに比べて 一見個性的ではなさそうに思える主人公は実は超・個性的であると言えるが、描かれ方は、どこにでもいそうだがちょっと変わった青年、だ)

実際には、彼のそうしたユニークさを面白い、と感じることができれば、長く付き合うに足る深みのある若者なのだが、その境地にたどるつける者は少ないと思わざるをえないとっつきづらさがあることは否めないだろう。(彼がカレー好きなことは作中でわかるのだが、酒は飲まないようだし、これといって彼を巧く釣れるような特定の嗜好も出でこない。その点イマドキの若者よろしくとらえどころがないのである)

本作は、特異な事件が起きてから、颯爽と現れた“探偵”が真相を解き明かしていく、というフォーマットではなく、読者が登場人物たちとともに、何かが起きているんじゃないか?という異変に誰よりも先に気づく久能整が、誰にも分からないような微かな違和感を正そうとする=整えようとする流れの中で、実際には多くの人を巻き込みつつ広がり始めていた事件を見事に解決していく様を楽しめる、というフォーマットだ。

好奇心と観察眼を思い切り刺激してくれる、超オススメの大人向けの作品

本作ではエキサイティングなアクションシーンはほとんどないし、絶妙なトリックや大仕掛けなどんでん返しもほぼない。
あるのは、主人公しか気づけなさそうな些細な違和感の軌跡を、丹念に結びつけていく作業だ。

この面白さに気づけば、読者は本作と、久能整の魅力にどっぷりハマれることだろう。
日常的な仕事の場面でもそうなのだが、事件というものは、突然発生する事故のようなモノでもない。本来は日々いろいろなところで発生している小さなきっかけに、その違和感に、都度気づくことができれば避け得るようなことが多いはずだ。

本作を読んで面白い!と感じられたなら、整君を真似て、日常的な些細な異変に関心を持って観察を始めるようにしたらどうか。
そんな好奇心と観察眼を思い切り刺激してくれるのが、この『ミステリと言う勿れ』だ。
2020年3月現在、全6巻まで発売されているが、今から読み始めても即刻追いつけるので、ぜひ。オススメだ。

画像: 『ミステリと言う勿れ』で整うミステリー好きなあなたの心

小川 浩 | hiro ogawa
株式会社リボルバー ファウンダー兼CEO。
マレーシア、シンガポール、香港など東南アジアを舞台に起業後、一貫して先進的なインターネットビジネスの開発を手がけ、現在に至る。

ヴィジョナリー として『アップルとグーグル』『Web2.0Book』『仕事で使える!Facebook超入門』『ソーシャルメディアマーケティング』『ソーシャルメディア維新』(オガワカズヒロ共著)など20冊を超える著書あり。

This article is a sponsored article by
''.