WBA、WBC、WBO(ロマチェンコ保有)、IBF(ロペス保有)、の世界メジャー4団体の世界ライト級タイトルの統一戦。
“プロスペクト”ロペスが、最強王者ロマチェンコに挑戦
2019年12月14日(日本時間15日)に王者リチャード・コミーをワンパンチで粉砕し、IBFタイトルを奪った若き王者 ロペス。
プロスペクト(若手有望株)、すなわち将来のスーパースター候補に名を連ねるロペスとしては、“格上”のロマチェンコを食って、一気に真のスーパースターの座を射止めたい。
ロマチェンコとしては、スーパーライト級へのステップアップは考えづらい(むしろスーパーフェザーに落としたいだろうと思われるほどの体格でしかない)ので、ロペスの持つIBFのベルトを奪って、史上4人しかいない4大団体の統一チャンピオンになりたい。そんな2人の思惑が今回のスーパーファイトを実現することになった。(逆に言えば、ロペスにとっても5人目の統一チャンピオンになれるチャンスがある、というわけだ)
当時の僕の評価としては、
ロペスのボクシングは、正直それほどうまくはないと思う。思い切りの良い攻撃は高く評価できるがまだ粗いし、ディフェンスはかなり甘い。コミーのジャブをだいぶ喰らっていたから、ロマチェンコの多彩なリードパンチに完封される可能性も高い。実力的には、まだまだこれからの選手なのだろうと思う。
というものだったが、1年という時間は若いロペスにとって恵みの1年になった可能性はある。
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の影響を受けてなかなか試合を組むことができなくなったボクシング業界にあって、既に30歳を超えたうえ、フェザー、スーパーフェザー級から階級を上げてきたもののライト級としては小柄な体格なロマチェンコとの“格差”はもしかしたら埋まってきているかもしれない、と思うのである。
スーパーフェザー級までのロマチェンコはまさしく無敵で、誰と戦ってもそのスピードとテクニックで好きなように翻弄できたものの、ライト級に上がってからは(前述のように)体格差やパワー不足が壁になっているのか、相手を簡単には圧倒できなくなっている。さらに彼が30代に入っていることもあって、もしかしたら加齢によってボクサーとして錆びついてきている≒老いているのではないか?という見方もある。ロマチェンコはライト級未満の選手であり、さらには既に老いている=ピークを過ぎているのではないか?と思われているのだ。
現代のボクシングシーンでは30代のチャンピオンが数多くいて、その実力のピーク・成熟時期は高年齢化していることは事実なのだが、こればかりは人それぞれである。
実際、8歳年下のカネロ・アルバレス と2度戦ったゲンナディ・ゴロフキン(世界ミドル級で史上最強と呼ばれた名チャンピオン。現在はIBF王者)は、2017年9月に戦ったときには(当時35歳)引き分け判定ながら見た目にはカネロを圧倒していたものの、1年後の2018年9月の再戦(当時36歳)ではカネロに明らかに力負けしてタイトルと名声を失った。ゴロフキンはその後も現役を続け、現時点ではIBFの世界王者に復帰しているから、いまだに"強い"選手であることには変わりないし、カネロとの第3戦を望んで交渉しているというから、本人と周囲は彼の衰えを意識してはいないかもしれないが、すくなくとも数年前の圧倒的な無敵ぶりはもうない、というのが僕の意見だし、やはり加齢によって衰えている、と思うのだ。
ロマチェンコに老いが見えてきているかどうかはおいて、少なくとも"登り調子"にある20代の若手ボクサー ロペスにとっての1年はエイジング(Aging=成熟度を上げる)の時間を得たと言えるが、30代のロマチェンコにとっては逆に ロッティング(Rotting=腐食していく)、貴重な時間を浪費したと言えるのではないか?
つまり、ロペスにとってはロマチェンコ対策を講じて、追いつき追い越すための時間を得られたかもしれないが、ロマチェンコには、1年試合から遠ざかったことによるブランクが“精密機械”に何がしかの狂いを生じさせ、さらに加齢によってその狂いを修正できていない可能性があるのではないか?という懸念があるのだ。
ワシル・ロマチェンコ | データ | テオフィモ・ロペス |
---|---|---|
1988年2月17日 | 誕生日 | 1997年7月30日 |
15戦14勝(10KO)1敗 | 戦績 | 15戦全勝(12KO) |
170cm/166cm | 身長/リーチ | 173cm/174cm |
サウスポー・ボクサーファイター | タイプ | オーソドックス・ボクサーファイター |
とはいえ、下馬評ではロマチェンコ圧倒的有利。ロマチェンコの技巧がロペスのパワーを封印するという見方が広がっているようだ。
(僕自身も 賭けるならばロマチェンコ勝利に賭けただろうが、ロペスの勝ち目もないわけではなく、1年前と比べれば相当に上がってきているかも?という意見で試合観戦に臨んだ)