こんにちは、恐竜おねえさんこと生田晴香です。今回は、ティラノサウルスが食べていたかもしれない恐竜『アンズー』をご紹介します。マイナーといえばマイナー恐竜ですが、恐竜マニアなら必ず知っている覚えやすい恐竜なのです。しっかりチェックしておきましょう。

連載コラム「生田晴香、恐竜と生きる」。福井恐竜博物館 公認恐竜博士、古生物学会友の会・恐竜倶楽部メンバーでもある自他共に認める恐竜ラバーのタレント生田晴香が、恐竜の素晴らしさを隅から隅まで語り尽くす。壮大な歴史とドラマ、未解明の不思議が交差する魅惑の恐竜ワールドへ、ようこそ。- dino.network編集部

地獄から来た鷄!?

画像: ja.wikipedia.org
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今回の主役、アンズー・ウイリー(Anzu wyliei)さん。

食べたことはありませんが、『あんず』と言うアプリコットとも呼ばれるフルーツがあったり、『杏子』というアニメのキャラがいたりするからなのか、アンズーという恐竜の名前はすごく頭に残りやすく覚えやすいですよね。

アニメキャラだったら、『遊戯王』や『魔法少女マドカ☆マギカ』、『ヒナまつり』などにあんずちゃんっていたな…とパッと思い浮かんでくるのですが。。(これは完全にアニメ好きなら激しく同意してくれるかと思います)

ですが、今回ご紹介する恐竜『アンズー』の名前は、アニメからとった訳ではありません。そもそも日本ではなく、アメリカのサウスダコタ州ヘルクリーク層で発見された恐竜なのです。

画像: 地獄から来た鷄!?

『アンズー(Anzu)』は、メソポタミア神話の翼を持つ怪物、アンズーに由来しています。

『ウィリー(wyliei)』は、最後に「i」がついている通り名前を表します。化石を入手し、研究が行われたピッツバーグのカーネギー自然史博物館の後援者1人、Lee B. Fosterの孫Wylie J. Tuttleに由来し、iを足して『wyliei』となった訳です。

お孫さん、自分の名前が恐竜の名前になれるなんて激しく羨ましいですね。本人一生死ぬまで自慢し続けるでしょうし、周りの人間も常に羨ましいと言い続けるでしょう。

アンズーは、学名とは別に“chicken from hell(地獄から来た鷄)”というあだ名が付けられています。科学者たちが使ってきたニックネームです。

ヘル(hell)はヘルクリーク層からきてます。ヘルクリークの意味は地獄の川です。

元々は学名に「chicken from hell」をラテン語かギリシャ語にして学名として名付けたかったそうなのですが、これらの言語をうまく表現できなかったため、シュメールの怪物アンズーから学名を決定したそうです。

2014年に命名されました。

どんな恐竜か

あだ名は地獄から来た鶏ですが、アンズーはチキンなどの鳥ではなく、鳥類に近い恐竜です。鳥類には近いけど鳥類の直接の祖先ではありません(なんだかとてもややこしいですね)。

獣脚類コエルロサウリア類オヴィラプトロサウリア類に分類されます。歯がなく、クチバシが短いのが特徴です。クチバシにはケラチンで覆われていたでしょう。

羽毛があり、オヴィラプトルやシチパチみたいに子育てをしていたと考えられています。巣の上に卵を置き、鳥のように覆い被さって抱卵していたということはわかっています(ちなみに羽毛が発見されたわけではないので注意!)

他のオヴィラプトロサウルス類にはない特徴は、前上顎骨が鶏冠方向へ延びていることと、上顎骨がL字型をしていること。また、脳幹の神経が通る穴が首関節の収まる穴より小さいといった特徴が挙げられます。

頭骨が本当に特徴的でトサカがまるもっこりしていますね。このトサカは何のためにあると思いますか?

画像1: どんな恐竜か

見た目の謎トサカ問題は、大体見た目をよくしてモテるためだと考えられることが多いです。アンズーの場合もそう考えていいのでは、と思います。トサカの骨も薄いですし、頭突き攻撃には使っていなかったでしょう。

全長(頭からしっぽの先まで)約3〜4メートル、体重は200〜300キロだったと推測されます。見た感じ首が長く感じますね。

大きく鋭い爪がありますが、歯がなく肉食ではないので植物を食べて生活していたか、雑食だった可能性もあります。

中生代白亜紀マーストリヒチアン(後期の最後の時代)、約6,800万年前〜6,600万年前までアメリカで生息していました。ノースダコタ州から1体、サウスダコタ州から2体分の化石が発見されています。

画像2: どんな恐竜か

ティラノサウルスやトリケラトプスと同じエリア、時代です。

ということは…そう、証拠はまだありませんが、ティラノサウルスに食べられていた可能性があります。

そのうちヴェロキラプトルとプロトケラトプスの取っ組み合い状態で発見された格闘化石みたいに、ティラノサウルスが口にアンズーを咥えて骨まで噛み砕いている化石が発見されてくれれば面白いですね。

画像: 格闘化石

格闘化石

脚は細く走るのは速かったでしょう。完全に予測祭りですが恐竜とはそういうものです。

中生代の恐竜は誰も見たことがなく「この恐竜は100パーセントこうでした!」と言えないので(もしそう書かれていたら疑ってください)、〇〇だと思われています。というぼんやりした書き方になりますし情報もコロコロ変わるので、現時点の研究ではそう思われているんだなぁと思ってくださいね。

名前も見た目も特徴的なヘルクリーク層のアンズー。一度見たら忘れられないのではないでしょうか。恐竜展でもたまに見かける子ですね。

ではまた次回!

画像: 頭に残りやすい!見た目も名前もユニークな恐竜 “地獄のアンズー”とは!?

生田晴香 | Haruka Ikuta
恐竜タレント。TV、CMのほかモデルとして活躍中。福井恐竜博物館の公認恐竜博士で恐竜検定所持。恐竜トークショー、クイズ、鳴き声コンテスト審査員。古生物学会友の会&恐竜倶楽部メンバー。恐竜のうた「ダイナソーDANCE」監修。実は元あやまんJAPAN。
YouTubeちゃんねる「恐竜わっしょい!」始めました。

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前回の「生田晴香、恐竜と生きる」はこちら

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