今回は、Netflixを急追する動画配信サービス“Disney+の目玉作品の一つ、『マンダロリアン』。スター・ウォーズファンなら見逃せないスピンオフ作品だ。
孤高の賞金稼ぎと、フォースを持つ子供の出会い
主人公は、アーマーとヘルメットで素顔を隠す、武装民族マンダロリアンの数少ない生き残り。(マンダロリアンは帝国軍との戦闘で母星を失っている)
凄腕の賞金稼ぎとして生計を立てている主人公は、あるとき 帝国軍の残党からの依頼で凄まじい念動力を持つ子供(これがヨーダと同じ民族と思しき見た目をしている。そして赤ん坊じみているんだけど年齢は既に50歳!)を探し出し連れ帰るのだが、なぜかひどく愛着を抱き、彼を帝国軍に渡すことを拒んでしまう。その結果、ほかの賞金稼ぎや帝国軍の残党から狙われる羽目になる、というのがストーリー。
フォースを持たない者たちの覚悟
早めに言っておくと、本作はスター・ウォーズのスピンオフシリーズとしては、かなり出来がいい。ボバ・フェットを彷彿させるマンダロリアンという一族の設定もいいし(ちなみにボバ・フェットはマンダロリアンではないらしいが関係はある。その辺りのエピソードも無理なく盛り込まれているし、現在公開されているシーズン2のラストシーンは、これぞスター・ウォーズ!と言えるファン泣かせの特別な配慮がなされている)、数少ない一族の生き残りである主人公の生き様はまるでサムライのようだし、佇まいにもそんなテイストが加えられていて日本人ウケするだろう。
そして、見た目はヨーダそっくりな“子供”がまたとても可愛くて身悶えさせられるのだ。
また、スター・ウォーズといえば、フォースと共にあれ(May the force be with you)という、一言(セリフ)だが、フォースを使えない者(つまりジェダイとシス以外の普通の人々)の中では最強と目される武装民族マンダロリアンには、これと異なる合言葉が用意されており、これがまたとてもかっこいい。我らの道(This i the way)というのがそれだが、武士道の覚悟あるいは忍者の掟を示すようでとてつもなく深遠でクールだ。
主人公は、自分達と少し異なる流儀と文化を持ったマンダロリアンの亜流?のような民族とも交流を持つのだが、相手を同胞と認めるとき、この言葉を互いに発するのである。
スター・ウォーズはやはりフォース共になきゃ?
スター・ウォーズという物語は、基本的にはフォースを持つ者たち同士の闘いであり、フォースを持たない者たちがいたとしても わずかに絡メルかな?という話なのだが、スピンオフとして製作されるシリーズのほとんどは、フォースを持たない者の苦闘を描いた話になる。
が、完全フォースを描くことがないとやはりスター・ウォーズではなくなるらしく、フォースがほぼ出てこない『ハン・ソロ/スター・ウォーズ・ストーリー』は興行的にはコケた。逆に、暗黒側の代表格ダース・ベイダーの圧倒的力や、正義の力であるフォースへの崇拝を描いた『ローグ・ワン/スター・ウォーズ・ストーリー』は高い評価と良い興行成績を残した。
そして本作においては、フォースの存在をあまり考えておらず、物理的な力やテクノロジー(マンダロリアン達が身につけるアーマーの材質はスター・ウォーズ史観で最強の硬度を誇るベスカーという金属だし、彼らは火炎放射器や飛翔用のロケットなど、闘いを利するさまざまな装具を開発している)によって、戦闘のあらゆる局面に対応しようとするマンダロリアンを描きつつ、彼らの想像を超える不思議な力(フォース?)を持つ子供を登場させることで、スター・ウォーズらしさを維持している。そして、前述したように、マンダロリアンたちの苦境を救うのは、やはりこのフォースだったりするのであり、スター・ウォーズファンからすると、ああやっぱり、
という気にさせられるのである。
つまり本作は基本的にはフォースを持たずフォースを知らない者達の話だが、彼らとてフォースへの畏れがまったくないわけではない、そんな空気を漂わせる作品なのである。
結論として、マンダロリアンは必見だろう
Disney+は、このスター・ウォーズシリーズ、マーベル・スタジオシリーズ(アベンジャーズ系?といえば通じる?)、それともちろんピクサーやディズニー本来のコンテンツ配信が中心であり、劇場に行くか配信契約をするかの二択から逃れるのはなかなかに難しい。さらに買収に成功したFOX系の映画の配信もできるから、その強さは推して知るべしだ。
基本コンセプトからオリジナルで勝負しなければならないNetflixからすると(まあもちろんWarner系≒DCコンテンツ含む などはあるが)かなりの強敵だ。
そこそこ大きく音質も良い、大画面テレビを持つ家庭も増え、劇場になかなか行きづらい昨今の事情と相まって、動画配信サービス同士のパイの奪い合いも激しくなる一方と思うが、少なくとも無料期間ではとても全てを消費することができないだけの、コストも手間もふんだんにかけられた高品質なコンテンツが用意されており、しばらくはどれか一つになど絞れない、消費者にとっては悩ましい期間が続くことだろうと思う・・・。
小川 浩 | hiro ogawa
株式会社リボルバー ファウンダー兼CEO。dino.network発行人。
マレーシア、シンガポール、香港など東南アジアを舞台に起業後、一貫して先進的なインターネットビジネスの開発を手がけ、現在に至る。
ヴィジョナリー として『アップルとグーグル』『Web2.0Book』『仕事で使える!Facebook超入門』『ソーシャルメディアマーケティング』『ソーシャルメディア維新』(オガワカズヒロ共著)など20冊を超える著書あり。