連載コラム「生田晴香、恐竜と生きる」。福井恐竜博物館 公認恐竜博士、古生物学会友の会・恐竜倶楽部メンバーでもある自他共に認める恐竜ラバーのタレント生田晴香が、恐竜の素晴らしさを隅から隅まで語り尽くす。壮大な歴史とドラマ、未解明の不思議が交差する魅惑の恐竜ワールドへ、ようこそ。- dino.network編集部
学名の覚え方
パラリ…うーむ、世界で2番目に長い恐竜の名前です。ここはしっかりと覚えられるように学名の意味を知っていきましょう。
パラリテリジノサウルス「Paralitherizinosaurus」の学名の意味は、ギリシャ語で「Paralos」(=海の近く)、「therizo」(=刈り)、ラテン語で「saurus」(=トカゲ)です。
種小名のジャポニクス「japonicus」は日本で、合わせると「海の近くの刈りとる日本のトカゲ」となりますが、日本の海岸に棲むテリジノサウルスという意味になります。
有名恐竜、テリジノサウルスとカムイサウルス・ジャポニクスを知っている恐竜好きの人からしてみれば、「パラリ」だけ覚えてその後にテリジノサウルスとカムイサウルスの種小名をつければ「パラリテリジノサウルス・ジャポニクス」となります。覚えやすいですね。
恐竜初心者の方に説明すると、テリジノサウルスは爪だけで1mはある特徴的な恐竜で、「大鎌トカゲ」と言われています。約7,000万年前、モンゴルに生息していました。発見されている化石の部位は比較的少ないです。
カムイサウルス・ジャポニクスは北海道むかわ町で発見されたハドロサウルス類の植物食恐竜です。学名の意味は「日本の竜の神」。全身の約80%〜が発見されており、海岸で集団生活していたのではないかと考えられています。
ここまでくるとパラリだけ何もないように覚えられてしまうのもかわいそう(?)なので、「パラリ」が付く恐竜を一つご紹介しましょう。
首としっぽが長いエジプトの竜脚形類「パラリティタン」という植物食恐竜がいます。全長約26mと大きく、テチス海南部の海辺に広がるマングローブ林に生息していたと考えられることから学名は「海辺の巨人」という意味です。せっかくなのでパラリティタン(ティタン→巨人)の名前も覚えておきましょう。
どんな恐竜?
さて、パラリテリジノサウルス・ジャポニクスのお話に戻りましょう。中川町エコミュージアムセンターのHPだったり(展示されてるそうな)、NHKのドキュメンタリー番組「恐竜超世界 in Japan」にて紹介されていたので、いつの間にか見ていた方もいるかもしれません。
パラリテリジノサウルス・ジャポニクスは、北海道・中川町のオソウシナイ層(蝦夷層)で、2000年に中川町在住の遠藤富士幸さんが天塩川水系の安平志内川流域で骨のようなものが含まれた細粒砂岩ノジュールを発見し、旧中川町郷土資料館に寄贈されました。
中川町のオソウシナイ層は白亜紀後期カンパニアン期(約8300万年前)の地層なので、そこから発見される化石はその時代に生息していたということになります。
クリーニングされた結果、爪2点と指の骨と思われるものが数点出ました。爪1点は先が欠如しているもののほぼ完全な形で残されており、長さは約14センチに達するのだとか。
比較的大きなサイズのわりに薄く、全体のカーブが弱い。関節面の背側(上側)に小さなリップ(張り出し)が存在する。関節面腹側(下側)の屈筋突起という張り出しが弱いなどの特徴から、獣脚類、テリジノサウルス類の恐竜だということがわかりました。
論文名:New therizinosaurid dinosaur from the marine Osoushinai Formation (Upper Cretaceous, Japan) provides insight for function and evolution of therizinosaur claws(白亜紀後期の蝦夷層群オソウシナイ層から産出したマニラプトル類の恐竜が示唆するテリジノサウルス類の爪の機能と進化)
英語ですが論文フリーなので貼っておきます。
パラリテリジノサウルスはアジアの最東端の記録であり、海成層から発見されたテリジノサウル類としてアジア初の記録及び世界で2例目の記録を持っています。(一応、日本で発見されたテリジノサウルス類では3例目)
日本にはテリジノサウルス類がより長い期間生息していたことやアジアではテリジノサウルス類がより広い生息域を持っていたこと、そしてより多様な環境に適応していたことがわかりました。
テリジノサウルス類の末節骨の形に基づいた解析を行ったところ、筋肉のつきぐあいと爪の先に力を加える効率がテリジノサウル類の進化の中で小さくなっていったことがわかりました。
とどのつまり力は弱かったみたいで、枝に引っ掛けて葉を食べていたのではないかと考えられます。
日本の新恐竜
化石自体は発見されていて、それにファルコンアイこと小林快次先生(ダイナソー小林とも呼ばれる)らによって新属新種として名付けられたパラリテリジノサウルス・ジャポニクス。
日本の新恐竜です。めでたいですね!
復元画が出てますが、発見されいる化石のパーツはまだ少ないので、実際どんな感じだったか100パーセント当てるのは難しいですが、こんな感じの爪が特徴の恐竜が日本にいたんだなぁと覚えておけばOKです。
これで日本で発見された恐竜は、ニッポノサウルス(今現在ロシア領土)、ワキノサウルス、フクイラプトル、フクイサウルス、フクイヴェナトル、コシサウルス、フクイティタン、タンバティタニス、カムイサウルス、ヤマトサウルス、パラリテリジノサウルス。
これからもどんどん増えていくであろう日本の恐竜、楽しみですね。では。
生田晴香 | Haruka Ikuta
恐竜タレント。TV、CMのほかモデルとして活躍中。福井恐竜博物館の公認恐竜博士で恐竜検定所持。恐竜トークショー、クイズ、鳴き声コンテスト審査員。古生物学会友の会&恐竜倶楽部メンバー。恐竜のうた「ダイナソーDANCE」監修。実は元あやまんJAPAN。
YouTubeちゃんねる「恐竜わっしょい!」始めました。