※取材協力:日本酒サービス研究会・酒匠研究会連合会(SSI)
大吟醸などの表記をあえてしない場合もある
純米大吟醸酒や大吟醸酒が高価で一番うまい日本酒、と思っている人は少なくない。確かに精米歩合が50%以下でそれだけ手が込んでいるわけだから、それが価格に反映されて高くなることもあるだろう。しかし、それが美味さに直結するわけではない。
そもそも美味さは人それぞれの好みに左右されるため、名称や製法によって決められるものではないのだ。
ちなみに、有名な新潟県の酒蔵メーカー・朝日酒造の「久保田」という日本酒は、表ラベルに大吟醸や純米大吟醸といった種類の表記をしていない。この理由は、日本酒・久保田の味を、毎年統一させるためだ。
というのも、米の出来で酒の味は変わるため、同じ味を毎年出すためには精米歩合も調整していく必要がある。もし大吟醸などと謳ってしまうと、精米歩合を変えるたびに、大吟醸酒が本醸造酒に……なんてことになってしまうのだ。これでは消費者が混乱してしまうため表ラベルに分類の表示をあえてしていないわけである。
こうした例もあるため、種類によってうまさをランク付けしてしまうような間違った知識を持っていると、美味しいお酒との出合いを自ら捨ててしまうことになる。
アルコール度数に気をつけよう
種類の話とは少し離れるが、アルコール度数についてもご紹介しておきたい。
ビールやワインといった他の醸造酒に比べると、日本酒のアルコール度数は少し高めだ。日本酒の多くが15%前後のアルコール度数だが、中には20%近い強い日本酒もある。
いつも飲んでいる日本酒の感覚やペースで飲むとあっという間に酔いが回る。飲む前にアルコール度数をチェックし、ペース配分を考えながら飲むのが大人の日本酒のたしなみでもある。
過剰な酔いを防ぐ方法として、日本酒と一緒に水を飲むとよい。この水のことを『和らぎ水』という。日本酒を楽しみながら水を飲むことは、決してマナー違反というものではない。日本酒にこだわりを持っているお店では「水をください」といえば、嫌な顔をすることなく、和らぎ水を出してくれるだろう。
おかしなルールや間違った知識に左右されずに、自分のペースで美味しく飲むこと。これが日本酒を楽しむための一番の秘訣である。