日本酒の味わいは、4つのタイプに分けることができると【知識不要】日本酒を楽しむ簡単な方法にて解説した。ただこれは、日本酒の味に対する分別であって、種類とは別の話。ここでは大吟醸酒や純米酒、本醸造酒といったよく見る日本酒ラベルの記述について解説していく。
※取材協力:日本酒サービス研究会・酒匠研究会連合会(SSI)

酒税法上での日本酒の呼び名は清酒

酒税法上、日本酒は『清酒』と呼ばれている。清酒の定義は必ず米を使い、漉(こ)すこと。ただし、この定義が満たされている場合は、ラベルに清酒ではなく“日本酒”と表記されている場合もある。

どぶろくやにごり酒は、一般的に日本酒として解釈されているが、漉していないため酒税法上では清酒ではなく『その他の醸造酒』という位置づけにある。

地域によって変わる日本酒

いきなり余談で恐縮だが、『酒』というと日本酒を指すかと思いきや、実は例外もある。

九州など焼酎の消費量が圧倒的に多い地域では酒=日本酒(清酒)ではなく、酒=焼酎、もっと言えば日本酒=焼酎を指すこともあるのだ。地方出張や伴侶の帰省などの際、「日本酒が好きです!」なんて言ってしまうと、思わぬトラブルに発展することも……。

画像: 酒税法上では、日本酒は清酒と呼ぶ。ラベルにも清酒として表記されている

酒税法上では、日本酒は清酒と呼ぶ。ラベルにも清酒として表記されている

画像: 酒税法上では清酒だが、条件さえ満たしていれば日本酒と表記しても問題ない

酒税法上では清酒だが、条件さえ満たしていれば日本酒と表記しても問題ない

特定名称酒が日本酒分類の基本

日本酒を分類するときの基本になっているのが1989年に制定され、1990年から適用された『特定名称酒』である。

それまで特級、一級、二級と分類されていたのが特定名称酒の制定によって、使用する原料、精米歩合の組み合わせにより8種類に分けられるようになったのだ。あまり日本酒を嗜まない人でも耳にしたことのある純米酒・吟醸酒・大吟醸酒というのが日本酒の種類のこと。

分類の方法としては、使用原料や精米歩合によって3つのグループに大別できる。

  • 純米酒グループ
    原料に米と米麹のみを使ったもの
  • 本醸造酒グループ
    米、米麹、規程量内の醸造アルコールを使ったもの
  • 吟醸酒・大吟醸酒グループ
    使用原料を問わず精米歩合が60%以下のもの

ちなみに、精米歩合とは、玄米からの米の削り具合のこと。通常、ご飯として食べている米の精米歩合は90%程度だが、日本酒用の米は30%以上削る。(この%は精米後に残った米の割合を示している)玄米の表面部分にはタンパク質や脂質が多く、これがあると雑味のある日本酒になってしまう。だから、贅沢とも思えるほどの精米を施すのである。

分類の話に戻ろう。ここからは少しややこしい。

純米酒グループでは、精米歩合の規定がないものを(1)純米酒。精米歩合60%以下のものを(2)特別純米酒、または(3)純米吟醸酒。50%以下のものを(4)純米大吟醸酒としている。

本醸造酒グループでは、精米歩合70%以下のものを(5)本醸造酒。60%以下のものを(6)特別本醸造酒、または(7)吟醸酒。50%以下のものを(8)大吟醸酒としている。

(3)と(4)は純米酒グループと吟醸酒・大吟醸酒グループに属していて、(7)と(8)は本醸造酒グループと吟醸酒・大吟醸酒グループに属している。

特定名称酒の規定
使用原料→
精米歩合↓
純米酒グループ
・米、米麹
本醸造グループ
・米、米麹・規定量内の醸造アルコール
規定なし(1)純米酒
70%以下(5)本醸造酒
60%以下(2)特別純米酒
(3)純米吟醸酒
(6)特別本醸造酒
(7)吟醸酒
50%以下(4)純米大吟醸酒(8)大吟醸酒
赤字が吟醸酒・大吟醸酒グループ

つまり、属しているものが複数ある場合、どれを名乗ってもいいわけである。

例をあげれば、40%精米歩合の日本酒であれば、純米酒・特別純米酒・純米吟醸酒・純米大吟醸酒のどれでも表記ができるわけだ。

画像: 使用原料や精米歩合によって、吟醸や特別純米など8種類に分別される。ほとんどの日本酒の表ラベルに種類が表記されているが、表記していない銘柄もまれにある

使用原料や精米歩合によって、吟醸や特別純米など8種類に分別される。ほとんどの日本酒の表ラベルに種類が表記されているが、表記していない銘柄もまれにある

大吟醸・吟醸などは製法の規定であって、味の違いではない!

先述した通り、純米酒、特別純米酒、純米吟醸酒、純米大吟醸酒、本醸造酒、特別本醸造酒、吟醸酒、大吟醸酒の8種類が日本酒の製法上の分類となる。

これらはあくまでも原料、製法(精米歩合)の規定であり、味わいを分類するものではない。

例えば純米酒でも淡麗な味わいのものから濃厚な味わいのものまでいろいろあり、香りに関してもフルーティな香りから熟成香の強い酒まで多種多様だ。

「この酒は大吟醸だから他よりも美味い!」ということではないので、しっかりと頭に入れておいていただきたい。

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