世界スーパー・ミドル級の4団体統一王者のサウル・カネロ・アルバレスに、世界スーパー・ウェルター級4団体統一王者のジャーメル・チャーロが挑戦したが、カネロの堅い防御とパワーの前に、跳ね返された。試合結果は、カネロの3-0の12回判定勝ち。

タイソンよりうえ?のカネロの資質

前にも比較したことがあるが、カネロ・アルバレスはかつての無敵ボクサー マイク・タイソンに似ている。背は低いが(ヘビー級としてはかなり小柄なタイソンは180cm程度、カネロはウェルター級でも小さめな、173cm前後だが)、共に筋骨隆々で首も太く実に雄大な体格である。そして、2人とも、常に相手をノックアウトしようとするケレン味のないスタイルで知られている。
しかし、2人の闘い方そのものは全く違う。
間合いを一気に詰め、飛び込みながらパンチを振るうタイソンに対してカネロはジワジワと間を詰める。遠くから一気に間合いを詰めて、強烈かつ速い攻撃を繰り出すタイソンに対して、カネロは腕を高く上げで顔面を守りながら相手にプレッシャーをかけ、ロープに詰めてから強打を叩き込むやりかただ。タイソンの速さには劣るが、カウンターを喰らわないようにガードを上げながらカネロは距離を潰していく。初期のタイソンはピークアブーと呼ばれるようにガードを固めた上で(グローブの親指を噛んでいたと言われる)、大きく頭を振りながら突進していた。
カネロは両腕で相手の攻撃をブロックしながら、間を詰める。詰めたうえで(できればコーナー、最低でもロープを背負わせて)左フックを主体とした強打を振るう。相手に当たる距離で、ガードの上からでも強く叩く。相手がその威力にビビればよし、最低でも(前述のように)ジャッジにアピールできる。それがカネロのやり方なのである。

特に、一度の敗北から打たれ弱さが露呈してしまったタイソン(というか、ヘビー級の一撃に耐えうる人間はいないらしいが)に対して、タイソンよりは軽い階級で4階級制覇を果たしたカネロは、堅いブロックキングもさることながら、打たれ強さに定評がある。単に防御が巧みなわけではなく、そもそもタフといえるのだ。だから、カネロを下がらせるには軽いジャブ程度では足りないのである。

チャーロは足を使ってカネロのプレッシャーを避けながら、ジャブでカネロを下がらせる作戦をとったのだが、カネロは下がらなかった。カネロにとっては勝手知ったるS・ミドル級だが、チャーロ弟には未知の世界。S・ウェルターなら相手を下がらせる彼のジャブだが、繰り返しているように、本物のS・ミドル級のカネロを後退させることはできなかったのである。それが、いちばんの チャーロ陣営の計算違いであり、チャーロの敗因となったと思う。

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